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エッセイ189:中小企業の生き残り策は、何をおいても人で差をつけること

中小企業の生き残り策は、何をおいても人で差をつけること 
 
 9年前の4月から、最後の職場にすると決めた中田薬局での仕事がスタートしました。それまでは規模の異なる企業での仕事でした。最大社員数数千人から二百名ほどの企業とは、大きな幅があったと思います。中田薬局の場合、釜石市内に4店舗(当時は5店舗)と規模は一番小さな企業ですが、私の力が最大限発揮できるという予感を持ちました。その理由は、現社長(当時は専務取締役)の考え方にありました。目先のことにとらわれるのではなく、本質を見据えて長期的視点で薬局経営を志向している点に、それまでの企業との決定的な違いを感じたことが思い出されます。具体例の一つが、社員教育への投資を惜しまないということです。“教育環境を整えるのは社長の任務”ということを、何度か耳にしました。薬局の未来は、薬剤師一人ひとりが主人公となって創造するものです。自ら考えて、率先垂範行動で造りあげるものです。私が10何年も前から提言していることの一つが、『自社の社員を自前で育てようとしない企業に明日はない』ということですが、中田薬局でなら私の思いが実現できると判断したのでした。 
 あくまでも私的見解ではありますが、当時の調剤薬局業界では、薬局間における患者サービス&生活者サービスの優位差はほとんど感じられませんでした。それも低いレベルで… 。私自身が患者として幾つかの調剤薬局を利用して、そんな思いを強くしたのです。仕事そのもので差がつかないのであれば、経営資源の核である“社員一人ひとりで差をつけるしか道はない”ということを、つくづく身に沁みて感じました。会社の生き残る道は、社員教育を上位優先課題として位置づけるということです。そして、中田薬局であれば実現できるという直感的な確信もありました。

 生き残り策を前進させるためには、社員教育の旗振り役であり実質的推進役である教育担当者の育成が必須要件です。自社の社員の中から、ゼネラリストの人事教育担当を育成して、研修も含めた人材育成機会を自前でカスタマイズし、実施できるようにすることです。何故なら、教育担当の実力が社員教育の成否を決めるからであり、外部コンサルタントによるアウトソーシング主体では、社員のやる気を引き出し続けることは不可能に近いからです。自前でやる基礎教育・実践教育、視野拡大・最新情報収集・最新技術修得を目的とした対外的教育、自主自立奨励型の自己啓発教育のトリプルエンジンを連結したトライアングル仕様が、育成ニーズに即した人材育成システムだと思います。それも画一的に回すのではなく、社員一人ひとりの現有能力と自発的やる気を鑑みた個別対応が理想形なのです。そのような難易度の高い実務ですから、教育担当者の育成には、かなりの投資と時間(年月)を要することになります。何しろ、現場の業務に精通していなければ、仲間からも足元を見透かされてしまいます。さらに、経営理念や年度方針の実現が前提でもありますから、それなりのキャリアを積んでの職務遂行能力を保有していなければ、この仕事は務まらないのです。
 それではどこから、どのように手を付けたらいいのでしょうか。教育担当としての実務キャリアという側面で考えてみましょう。教育担当者の役割・機能は多岐にわたっています。(参考:EDUCOの森13回)その中で、私自身が一番時間とエネルギーを費やした研修会やセミナーの企画・運営について、私の歩んできた道の一部を紹介したいと思います。
 企画といっても、教育問題の兆候とその原因を把握して、育成ニーズを明らかにすることからスタートします。往々にして、実施することが目的の教育機会に出会うことがあります。そんな無為・無益・無駄・無責任な企画は、何があっても許してはいけません。育成ニーズとその理由によって、その後の対処法に大きな違いが出てくるからです。納得するまで追求する姿勢で向き合いますから、この段階から時間とエネルギーを使うことになります。また、外部教育団体の既成研修に派遣することは極力避けて、自力で誂えて自力で運営することが基本方針でしたから、研修用教材も一から勉強して自前で作り上げました。研修を実施するまでに2年計画で取り組んだプロジェクトにも参加しました。それも複数回経験したと思います。GOサインが出るまでの緊張感はハンパなかったですね。そんな地道で愚直な積み重ねを5年以上も続けていると、研修企画・運営の基本と効果的・効率的な進め方のコツが身につきました。気がつけば、それぞれのニーズに沿った企画を短時日でカスタマイズ出来るようになったと思います。これらの職務遂行能力は、いまだに衰えていません。だからでしょうか、問題意識の強弱にかかわらず、将来活用できそうだと判断した教材やカリキュラム作成は、楽しみながら苦も無く続けられているのです。ライフワークになりました。
 教育担当のプロへの道のりは、5年先10年先まで延々続くと覚悟して、最初は50点(100点満点)で構いませんから、とにかく研修を企画し運営しながら、ディレクター、インストラクター、コーチとしての腕前を上げることです。質など気にしないで、量をこなすことです。情熱(パッション)を前面に出して、どれだけチャレンジしたかで決まると思います。申し上げたいことは、目の前の課題から逃げないで(=キチンと向き合って)、土台からコツコツと経験を積み重ねていけば、研修も含めた人材育成機会を自前でカスタマイズ出来るようになるということです。どれだけの年月を要するかは、人それぞれ異なるでしょう。積み重ねる過程での仕事環境も含めて、幾つもの要因が影響してきます。5年の人もいれば、10年以上かかる人もいるでしょう。納得するまで実践し続けた結果ですから、本人の引いた合格ラインまで継続するしか道はありません。諦めて投げ出す人も出てくる世界なのですから …… 。
 次は、運営面について考えてみましょう。
 研修会などのOffJTでは、受講希望者が1名であっても実施しておりました。一方、受講者が18名を超える場合、研修内容によっては開催回数を増やして実施するようにしております。例えば受講希望者が33名の場合、18名と15名に分けて2開催するということです。研修内容にもよりますが、18名を越える受講者では、責任を持って研修の品質を維持することが不可能という理由からです。
 私の主宰する塾では、古い時代の学校形式ではなく、受講者をグループ分けして進めております。18名の場合、1グループ6名で島を作り3グループにします。1グループの最大人数は8名が原則で、受講者数に応じて都度編成しております。受講者全員がお互いの顔を見ながら、“我以外皆我師也”を実感出来るようにしたいからです。
 社員教育は量が一番だと考えています。回数です。特に若い世代では、手当たり次第で構わないから学びの場に極力参加させることです。そのために、教育担当は、OffJT、OJT、自己啓発を問わず、繰り返して学ぶ機会を作ることに知恵を絞って頂きたい。そして、学ぶことの意味を何度も問いかけて、学ぶ機会への積極的参画を促すようにすることが重要だと思います。
 受講者の理解度をより高めるためにやり続けている作法もあります。担当する研修の実施要領書の作成です。研修目的達成のために、必ず研修全体と各カリキュラムをストーリー化します。実施要領書は、その脚本であり、インストラクターの虎の巻になるのです。この作法は私の情熱の証しであり、実践不能に陥ったら手を引くと決めております。教育担当としてのパーソナルインフルエンスの原点は、何と言ってもパッションでしょう。情熱なくして、人財育成なしですね。

 エッセイ189回の内容は、長年の研修企画&運営体験から学んだ結果の一部になります。教育担当者育成を意図したエッセイは、今まで培ってきた考えやノウハウ提供を目的の一つとしてスタートしましたから、関連しそうなエッセイは何度となく呟いていると思います。興味を持たれた方は、改めてひも解いて頂きたいと存じます。
                                                  (2019.4.14記)

エッセイ188:あれがあったから今がある~私の人生のターニングポイント

 中田薬局の平成31年度新卒新入社員導入研修が、明後日にスタートします。4月1日(月)から新卒薬剤師が仲間入りするのです。昨年度入社の薬剤師2名と同じように、弊社を自分の耳目で確かめて、日々の活動姿勢と活動実態に共鳴して入社してくれました。中田薬局での保険薬剤師の道を選択して頂いたのです。責任をもって、一人前のプロフェッションへと導く所存でおります。“共に”の姿勢で、成長し合いたいのです。導入研修については、今後のエッセイで取りあげたいと考えております。
 第180回のエッセイは、確信をもって言い切れる私の人生のターニングポイントを呟いてみましょう。“今だからこそ言い切れる確信”と表現した方が、より的を得ている気もします。

あれがあったから今がある~私の人生のターニングポイント 
 
 ターニングポイント。……… 人生における分岐点と解釈すれば、何度もあることではないように思います。過去のエッセイでは、何度かターニングポイントという表現を使いました。今回は、私が産声を上げてからの72年間を振り返り、私の人生の転換点のきっかけとなった出来事を、数の多少にとらわれないで掬い上げてみたいと思います。
 先ずは、18歳目前の高校3年次夏休み前のことから始めましょう。大学進学を決意し、それも住み慣れた実家を離れて一人暮らしを選択したことが、最初のターニングポイントになります。首都圏の3大学3学部を受験しました。唯一合格した東京薬科大学男子部薬学科に入学し、高校の先輩に誘われるまま東京薬科大学合唱団に入部しました。気がつけば部活動に熱中し、その4年間の出来事や体験が人事教育担当のDNAになっていると気づいたのは、卒後20年近く経ってからになります。当時は、苦悩、悲哀、行き詰まりによる失速など初心の溜まり場でした。その要因の最たるものが、私自身の内面の未熟さや無能さでした。そのことを、年を重ねて素直に認められるようになったことで、どうあれば良いのかが見えてきたのです。働きかけるコミュニケーションなどの行動力、積極性、積み重ねの重要性、等々…。
 二つ目は、30歳目前の5月でした。薬剤師の道を切り上げて、日用品・香粧品卸売業I社への転職を決めてUターンしたのです。様々な対人関係の実態(特に難しさ)を見聞きし、経験させられました。今で言うパワハラ、アルハラもあって、相手の立場に立つことの必然性を身に染みて感じた10年間でした。“やられて嫌なことは絶対NG”ということは、この時期に芽生えたと思います。
 その後、同業他社との合併があって、新会社に新設された教育部門の専任責任者に任命されたのです。勤務地は仙台で、39歳での単身赴任となりました。これが三つ目のターニングポイントになります。13年間従事した人事教育部門での活動実績、その間に培った理念や考え方が、採用担当者つぶやきエッセイとEDUCOの森の素材になっています。
 もう一つのターニングポイントは54歳の時になります。24年間勤務したK社を早期定年退職して、第三の人生を選択したことです。転職理由はいくつかありましたが、以来岩手、千葉、福島の5社で主に社員教育・人材育成・採用の仕事に携わりました。ドラッグストア2社、調剤薬局チェーン3社が内訳になります。途中、66歳で手術入院(9日間)をし、約2か月間のリハビリも経験しました。その2か月半は、患者の眼で医療の実態を知り考える機会となり、教育担当としての引き出しが増えたと実感しております。
 上記の四つの出来事を人生の分岐点と判断した理由は、その時々の事情や状況によって異なります。全て私自身の判断で最終決定したのですが、私の思いや志だけで決められたわけでもありません。転職するたびに、どの企業においても眼の前の新たな環境への対応に精一杯の状態でした。社員一人ひとりの顔を知ることから始まります。組織のあり方、意思決定方法、仕事の進め方、権限の委譲度合い、社内の人間関係など、各社それぞれ大きく異なります。特に54歳以降から転職した企業は、経営者自身の考えが色濃く反映されていました。さらに、その実態は5社5様ですから馴染む苦労がありました。入社前に経営者の考えを把握できれば良いのですが、不可能に近いのが実態です。入社直後に私の見当違いに気づき、悔しさと情けなさを感じた転職が複数あったことも事実です。現在は5社目の中田薬局(岩手県釜石市)でお世話になり9年目に入っております。

 さて、古希を過ぎて精神的に余裕が持てるようになり、より客観的な姿勢で私の人生の因果関係の検証ができるようになりました。“あれがあったから今がある”、“あれのおかげで今がある”と思えることが、いくつか出てきたのです。“今を結果とすれば、あの時のあれが原因だった”とつくづく感じることです。本来であれば、四つのターニングポイントの中身を詳しく取り上げたいのですが、かなりの紙面を割くことになります。その実情の一端はエッセイ146回と148回に譲って、ここでは現時点で特に思いの強いあの時の様子を紡ぎ出してみたいと思います。第三の人生と位置づけている54歳以降の転職に関してです。
 仙台での10数年間は、部門責任者として部下を指導し、ある時から取締役として会社全体をコントルールする立場にありました。転職後は、何事も全て一人でやらなければければならなくなったのです。掃除、準備、資料作成を始めとして、私自身が一から十まで行動しなければ一歩たりとも前へは進みません。手始めにパソコンを購入しました。添付手引書と睨めっこして、最初の設定から自力でやり始めたのです。覚悟はしておりましたが、何から何まで覚束ないフラフラ状態でのスタートでしたね。ICT操作能力はゼロに近かったことから、Wordの文書作成技術の修得のために、朝から晩まで毎日毎日教材の作成に没頭したことは忘れられません。何とかWordの基本をマスターして、第一ハードルを突破するまでに3か月は要したと思います。
 54歳からの転職経験を通して、分かってきたことがあります。それらが今回のエッセイで強調したいことであり、核心部分になりそうな気がします。そのいくつかを紹介しましょう。

 企業内教育の仕事を担当するようになって、私自身の心構えの中心に据えていることがあります。それは、『人は一人では生きていけません。これまでにどれだけの方々のお世話になったことか。多くの人のおかげで今があります。それは相見互いなのです。このことを忘れてはいけません』という内容です。その人間観を受けて40歳代前半から言い続けている、“だから、相手の立場に立って考えること”の必然性や意味を、54歳からの転職で強く感じるようになりました。教育担当に従事してから14年を経て、身に染みて実感できたのです。以来、相手の立場に立つことの必然性や意味について、ただ文言を読みあげるのではなく、心を籠めて問いかけられるようになりました。相手:自分=51>49は、その過程で辿り着いた私なりの見解です。それからは、共育姿勢と傾聴を土台にしたコミュニケーションの頻度が、明らかに増したと思います。私の志向するグルグル回りの応答の対話による進め方が、かなりの幅を利かせるようになりました。
 20年近く関わっておりますドラッグストアそして調剤薬局は、30年以上も右肩上がりの成長を続けて現在に至っております。その多くはオーナー経営者の強いリーダーシップによって急成長を遂げている分、成長度に見合った組織運営が追いついていないという問題が散見できます。一方通行のトップダウン傾向にありますから、社内の風通しが好ましい状態には成り難いのです。一所懸命考えて提案しても、なかなか受け入れてもらえません。結果的には、従属的依存意識が支配する風土ができあがります。恐ろしいのは、社会の健全な常識とのズレが蓄積することです。もっと怖いのは、そのような実態に気づかないまま、独りよがりの考え方が身についてしまうことです。企業理念や方針が立派であっても、ガバナンスの実態が相反していては、退職するしか道が無くなってしまいます。そんな理由からの再転職を何度か繰り返しましたが、一方では諸事情で転職できずに我慢をしながら会社を支えている方々もいらっしゃいました。そんな現実から目をそらすことは戒めなければいけません。得難い貴重な経験をしたと強く思います。
 私が転職活動をする場合、採用面接段階で経営者に必ずお伺いすることがあります。一つは、経営者自身の理念とビジョンです。会社設立の経緯、現状の問題点と課題についても質問します。もう一つは、入社後の私自身に期待する具体的な使命と待遇です。曖昧な対応をされることがほとんどでしたし、はぐらかされたと感じることだってありました。しかし、意を決しての転職ですから、お伺いする理由を添えて質問を繰り返しております。それまでの人事の仕事を通して、入社後のミスマッチを何度も見聞きしていることも影響しています。現実、入社したその日にミスマッチと感じたことがありました。数か月後に面接での約束を反故にされたこともありました。年齢からして遅すぎた気もしますが、ある時から後ろ向きの思いを裏返して陽転思考で総括するようにしたのです。相手のせいにするのではなく、自律要因に目を向けて、私自身の観察力・洞察力の拙さが原因であることを認識したうえで、正面から正攻法(採用面接での経営者への質問)で対処することにしたのです。
 いくつかの企業で仕事をしながら、こんなことも感じました。ほとんどが無意識で悪意はないのでしょうが、企業の壁に寄りかかっている方が多いということです。さらに気になるのが、先ほども触れました“所属企業の常識=世間の常識”という構図の存在です。倫理的規範に鈍感な感じもします。大きな企業に勤務されたベテランで、かなりの業績を上げられた方に見受けられます。そんな姿を見苦しいと感じたことから、それまでの常識は疑って考え直すことにしております。これも転職したからこそ気づいたことです。

 四つのターニングポイントで紙面を割いたうえ、話が彼方此方へと飛び火をしてしまったようです。エッセイ180回の目的は、ターニングポイントから得られたものを描き出すことでした。私にとっての貴重な賜り物を、きちんと整理をしてまとめたいと思います。
 私の成長が実感できていることの一つは、状況に応じた対応を淡々と実践していることです。思い立ったらせっかちなタイプですが、その時々の実態を把握しながら待つことができる様になったのです。私自身、非常にびっくりしています。以前から意識して続けている早期着手との相乗効果で、徒労に終わる回数が少なくなりました。余計なストレスを感じることなく、(今どきの言い方になりますが)楽しんで仕事をしております。
 こんなことも理解し納得できるようになりました。“短所・欠点は長所の裏返しであり、長所は短所・欠点の裏返しになる”ということです。引っ込み思案で消極的という欠点は、誰よりも相手の話に耳を貸している長所と思うようになりました。傾聴力を磨き高めてくれたと実感しております。また、人知れず努力することを厭わない長所に誘導してくれたのです。最後までやり通す持続力を養ってくれたとも想像しております。さらに、これらの体験は、私の考動指針を見直す格好のチャンスとなったと思っています。
 54歳からの第三の人生も18年になりました。着眼点や引き出しが格段に増えたと実感しております。より柔軟な見方や考え方で、問題や課題と向き合えるようになりました。本質的側面が以前よりも見えるようになり、ぶれることなく余裕をもった行動がとれるようになったと思います。その結果として、ようやく“真の自立とは何か”ということが理解できたような気がします。これらの認識は、大学卒業から30歳代までは考えられなかったことです。それ以上に、今も仕事を続けていられるのは、それまでの数々のプロセスがあったからだと感謝の念に堪えません。改めて意を強くしていることは、謙虚に学び続けること、コツコツ努力し続けること、小さな成功例を積み重ねることだと思います。私のような引っ込み思案で消極的、不器用で対人関係能力が稚拙な方の生き方の参考になりましたら幸いです。
                                                   (2019.3.25記)

エッセイ187:「不易流行」と「温故知新」

 一年半ほど前になります。平成30年度の新入社員教育をゼロベースから見直すことを決意しました。ゼロベースという意味では、採用活動のあり方も、数年前に土台から再構築しております。だからといって、それで全てOKとは考えてはおりません。数年おきに見直すことは避けて通れないという認識でおります。
見直し作業のいずれもが、不易流行と温故知新の産物だったと思います。かなり強めの問題意識で人材育成の不易流行を温故知新して追究した結果、私たちが志向する本質的な考え方を具現化する方法に辿り着いたと確信しております。詳細につきましては、エッセイ160回・181回をご覧ください。
 今年度は、かなりの手応えを感じた昨年度に甘んずることなく、さらに進化した人材育成策を追究したいと少々意気込んでいるのです。新たに迎える仲間(4月入社の新卒新入社員)の顔を思い浮かべながら、新入社員研修の準備を、余裕をもって、楽しみながら進めております。一年以上も前に頭の中を駆け巡った四文字熟語「不易流行」&「温故知新」は、私にとってことさら親近感があり、ハートに響く考動指針でもあります。今回のエッセイでは、「不易流行」と「温故知新」の意味を考えてみたいと思います。

「不易流行」と「温故知新」

 私が組織運営のあり方を探る時に意識するのが「不易流行」と「温故知新」です。特に、一から見直す時には、結果として、そこから出発していることが多いように感じています。前文で申し上げましたが、なかたシップ(中田薬局のインターンシップ)も新入社員教育も、「不易流行」と「温故知新」から生まれたものなのです。

 先ず、不易流行から考えてみましょう。
 “松島や、ああ松島や、松島や”は、どなたもご存知の名句ですね。代表的俳人である松尾芭蕉が、日本三景の一つ松島(宮城県)を訪れた時に詠んだ俳句になります。芭蕉は、俳諧の本質を不易と流行の相反する二面からとらえ、根本においては一つに帰するべきものとしました。不易は千載不易です。新古を超えて(いつまでも)変わることのない永遠性のことで、俳諧の本質と位置づけています。流行は一時流行です。新しさを求めて変化を重ねていく流行性のことで、これこそが不易の本質であり、不易と流行は根本においては結合するべきものである、と説いています。
 20数年前になりますが、企業経営や組織運営、人材育成や仕事の進め方にも、「不易」の側面と「流行」の側面があり、その二つは共存共栄の関係であり、両立させて誂えなければならない間柄と考えるようになりました。一言で表現すれば、「千載不易」は『基本の徹底』であり、「一時流行」は『経営環境の変化への即応』と捉えております。この二つの側面を、日々の仕事の中で当たり前に両立できる柔軟性のある組織だけが、不倒不滅・永続的繁栄という勲章を身につけることができるという考えに至ったのです。
 次は、温故知新について考えてみます。
 儒教の四書をご存知でしょうか。『大学』、『中庸』、『論語』、『孟子』です。四書の一つ『論語』は、儒教の開祖である孔子と高弟との言行録だそうです。孔子の死後、弟子たちが記録した書物なのです。その2番目の篇『為政第二』において、師の資格として“故きを温(たず)ねて新しきを知れば、以って師となるべし”と述べています。それは、歴史、先人の思想、学問を研究して、新しい見解、道理、知識を発見するようにしなさい、ということです。また、“温ねて”は“温(あたた)めて”ともいって、その場合は、以前学んだことを復習して新しい知識を得る、と解釈されているようです。
 私はこのように捉えております。温故知新は、振り返って顧みることの本質ということです。
ややもすれば消極的と受け取られがちの振り返りは、原点を見つめ直す機会になるのです。何とかしたいという強い問題意識を持って故きを温ねて考察すれば、新鮮な考動指針が現れてくると思います。
                                                (2019.3.10記)
 【参考】エッセイ160回:WELCOME なかたシップへ(2018.3.18記)
      エッセイ181回:人財育成は10年先(長期的視点)を見据えて誂える志事(2019.1.17記)

エッセイ186:会議の担当者・司会者の基本心得あれこれ!

会議の担当者・司会者の基本心得あれこれ! 

 会議の実態や活性化に関して3回にわたって取りあげました。176回のエッセイでは、会議の機能をシンプルに見直した上で、それまでの実体験をもとに作成したチェックリストを紹介しております。活性化の入り口となる現状実態と問題点を把握することが主目的でした。それらを踏まえて、会議活性化推進のキーパーソンの一人である会議担当者や司会者が、どのような点を意識して運営し進行したらいいのかを考えてみたいと思います。
 本題に入る前に、復習も兼ねまして「会議の機能と参加者数・所要時間の関係性」をまとめておきましょう。
 連絡・報告や情報提供がメインであれば、人数制限の必要性はありませんから、参加者数が多くても構いません。ダラダラと時間をかけることなく、効率性を意識しタイムパフォーマンスを高める工夫をすれば引き締まった会議が実現できます。ただし、内容の本質が理解されることが目的であることを忘れてはいけません。
 経営幹部の所信表明や説示が中心となる定例会議、入社式などのセレモニー的会議も、先ほどのケースと同様ではないでしょうか。儀礼的要素が高いように思われがちですが、重要な方針や見解を直接聴く数少ない機会になります。経営者や経営幹部の説示・訓示の場合には、全社員参加ということもあるでしょう。可能な限り多くの関係者が参加できるような運営をすることです。進め方に関しては、必要な時間をキチンと予測して企画をすることが肝要となります。
 情報収集がメインの場合は、収集情報の重要度・緊急度によって、参加者数も時間も臨機応変に対応することがポイントでしょう。
 会議に求められる一番の機能は、“意思決定”の場であり、“相互理解・共有化”の場ということにつきます。意思決定に必要な“情報交換”、“質疑応答”、“相談・調整”という機能が、絡まり合ってきますし、そもそも“英知を結集して知恵を出し合う”場が会議なのです。議題によって出席者を適宜適切に選出しなければなりませんし、所要時間が大きく変わることもあります。
 いずれにしても、会議の機能と議題の性格(緊急度、重要度)によって、会議運営担当部署は会議の準備段階から心配りと的確な対応が要求されます。それも会議の目的に即した準備でなければ失格となるのです。そのような問題意識で対処することが、会議担当者・司会者の心得の大前提ではないでしょうか。

 いざ会議がスタートすれば、会議のリーダー的役割を担うことになります。それは、進行司会者の腕の見せ所であることを意味します。セレモニー的会議や伝達がメインの会議であれば、予定に沿った進行が中心となります。何よりも円滑な時間管理を優先すれば事足りる場合が多いでしょう。
 それ以外の機能を有する会議の場合は、限られた時間の中で、いくつもの役割を果たさなければいけません。ファシリテーター、コーディネーター、カウンセラー、ディレクターなど、状況に応じて演じ分けることが求められるのです。どうやって乗り越えていけばいいのか、会議の運営担当者・進行司会者の心得を“会議司会者の基本心得イロハ”と名付けて、10項目ほど考えてみました。当然の内容と思われるかもしれませんが、その当たり前が済し崩しにされてしまうことも現実には多いのです。実は、このような身近な小さな工夫の実践こそが、会議の形骸化を阻止する要諦なのだと感じております。
 余談になりますが、これらの心得の多くは、研修会におけるグループ討議の進行役の心得にも当てはまりそうな気がしております。

  会議司会者の基本心得イロハ

1.議題は事前告知を原則とし、より具体的な表現で明示する。
2.参加者は、会議の議題に関係のある人に限定する。
3.ホワイトボードのような共有化可能な書き込みツールを用意する。
4.参加者全員の顔が見えるような席の配置をする。
  ・コの字型、丸型など、参加人数に応じて工夫する。
  ・研修会の場合は、グループ分けをして島型で運営する。1グループの人数は6名前後がベスト。
5.席次は固定しない。役職に関係なくバラバラに座るようにする。
6.スタート時には、会議の目的と目標を明示し共有化する。
7.発言時間や休憩時間などの時間管理は、状況に応じてコントロールする。
8.議題によっては、グループ討議、グループワークを組み入れる。
  その場合、各グループの結論や経過・理由を、参加者全員が共有する時間を設ける。
9.文書化した議事録を作成して、参加者全員が共有する。
10.会議の成否は、運営担当者・進行司会者の責任という自覚を持つ。

                                          (2019.2.27記)

【参考①】会議の実態や活性化に関するエッセイ
 ・エッセイ166回:会議やグループ討議から得られる宝物(2018.6.10記)
 ・エッセイ171回:会議の六悪を見つめ直してみました(2018.8.1記)
 ・エッセイ176回:会議の機能と会議活性化のチェックリスト(2018.9.5記)

【参考②】私の考える“教育担当者の役割・機能”:エッセイ130回(2016.10.15記)より
    
 各組織が主人公となって、組織ぐるみで人材育成に取り組み、
      活き活きとした組織風土作りを企画・運営・推進する演出家(ディレクター)であり、
 社員一人ひとりが、自らを主人公と位置づけ、
      能動的に自問自答しながら潜在能力を引き出す促進役(ファシリテーター)であり、
 壁にぶつかった時の助言者(メンター)、聴き手(カウンセラー)、道案内人(ガイド)であり、
 『やって見せて、言ってきかせて、やらせてみて、ほめてやらねば人は動かじ』を、
         いつでもどこでも実践している指導者(インストラクター、コーチ)であり、
 人と人、人と情報、人とノウハウ、人と資源を結びつけて、
         相互理解、相互啓発を推進する調整者(コーディネーター)である。

エッセイ185:成功確率が高い「問題解決の基本手順」

 今回のエッセイは、PDCAサイクルをアレンジした“成功確率が高い「問題解決の基本手順」です。184回のエッセイの補足資料になります。

成功確率が高い「問題解決の基本手順」

手順1:問題を把握する:観察
      自分が、グループが解決しなければならない問題を明確にする。
       ※発生している現象や状態の事実(ファクトベース)を、4直4現主義で調査。できるだけ数値化して、率直に表現。
       ※「直ちに現場で、現人を、現物を、現時点で」が4直4現主義
       ※背景や原因を問題とは言いません。

手順2:原因を分析する:分析
      問題がなぜ起こっているのか、その原因や背景を分析する。
       ※ 原因はできるだけ沢山だします。そして、それぞれの因果関係を整理して、重要な原因との相互関係を明らかにします。

手順3:対策案を列挙し整理する:判断
      その状況のもとで考えられる解決策を、できる限り列挙します。
       ※先入観を排除して、できるだけ沢山だします。
       ※これからの課題に取組む時は、必ず仮説を立てます。

手順4:比較選択する:判断 
      列挙した各対策案の長短を比較し、その状況に最も適した有利な実行案をひとつ選択します。

手順5:選択案の実行計画を立て、全体をチェックする
      対策案を実行に移す手順を、順序だてて具体的な計画にします。
       ※6W3Hを動員します。それが、具体化の鍵です。

手順6:計画に沿って、実行する

手順7:定期的に、進行状況を検証する
                                                 (140123改②)

エッセイ184:何故、なぜ、ナゼを反復すれば、根源的な原因が見えてくる

 181回・182回のエッセイでは、採用や新入社員教育のあり方、それらの試行錯誤事例の概要を取りあげました。“行き詰まったら、一度原点に帰ってみよう”という言葉に導かれて、白紙のキャンバスに向かって土台から作り上げることにしたのです。見直し作業でよくやる失敗例の一つに、過去を全否定し「変える必要のないところ(=変えても意味がない)」、「変えるべきではないところ(=さらに悪くなる)」までも変えて、負のスパイラルに陥ってしまうことがあります。効果の出ないことにエネルギーを費やせば、メンバーのやる気までもが衰退してしまいます。見直す場合には、より知恵を働かせてメリットとデメリットを明らかにし、その時々の経営環境に応じて仕訳することが肝心でしょう。
 今回は、課題や問題を目の前にして、PDCAサイクルを回す時の基本的進め方を取りあげてみます。何度となく触れてきた内容が中心になると思います。

何故、なぜ、ナゼを反復すれば、根源的な原因が見えてくる

 20年以上も前になります。何かの研修で、ある問いかけをやってみました。“あなたの考える『仕事とは?』は何でしょうか”という質問だったと思います。ブレーンストーミング的なグループ討議でしたが、議論の中で意味深な一言がさらりと言いのけられたのです。“仕事というのは、日々発生する問題を解決することではないでしょうか!”と。考える間もなく、“言えてるネ”と納得してしまいました。そんな時に思いついたのが、問題の定義を明らかにして、メンバーが共有できる問題解決の基本手順を手引き化することでした。
 それから数年後、2年間だけでしたがドラッグストアチェーンの本部で人材育成の仕事に携わりました。入社早々感じたことは、自主的に考えて自律的な仕事の進め方ができていないことでした。そこで、仕事の進め方の基本修得を喫緊の教育課題として、“仕事の進め方の基本をスキル化することが何故重要なのか!”を含め、PDCAサイクルをより具体化した“成功確率の高い「問題解決の基本手順」”を作成し直したのです。その中でも最優先の課題と位置づけたのが、解決の入口であるPLAN(計画)でした。そこで、PLANの流れを五つ(「手順1:問題把握」、「手順2:原因分析」、「手順3:対策案列挙」、「手順4:対策案比較選択」、「手順5:実行計画立案」)に分けて、肝心要となる考動指針や留意事項も明記することにしたのです。(別紙参照)
 横道にそれますが、それから20年近く薬剤師の皆さん方と仕事を共にして、相変わらずPDCAサイクルのような仕事遂行上の基本スキル(共通専門能力)に問題があると感じております。顧客のためになる貴重な専門知識(固有専門能力)を勉強しても、その専門知識を十分に活かすための基本が身についていなければ、宝の持ち腐れになるでしょう。このことは、薬剤師としての可能性の扉をさらに拡げる度合いが、低空飛行状態のままであることを意味します。この件は、これまでのエッセイやE森で、何度も問題提起してきたテーマです。

 話を本題に戻しましょう。
 PLANの五つの手順の中でも、手順1と手順2がポイントではないでしょうか。それが私の実感であり見解なのです。成果につながる一番の勘所であり、この二つをしっかり押さえておけば、八割方問題が解決したといえると思います
 先ず手順1の問題把握から考えてみましょう。最初の関門は、問題の定義を再確認し共有化することです。その理由は、問題と原因を混同して迷路に入って彷徨うことがあるからです。この点が最初の関門だと常々感じております。問題とは、目標・あるべき姿(理想像)・ルールと現実の姿とのギャップのことです。そのギャップが何なのか、どれだけのギャップなのかを、四直四現主義(直ちに現場で、現人を、現物を、現時点で)で、事実(ファクト)を積み上げて、可能な限り数値化することが基本でしょう。この段階では取組み姿勢が旺盛ですから、メンタル的に熱くなって解決を急ぐ傾向が見受けられます。過去の経験が邪魔したり、先入観が幅を利かせたり、冷静さを欠いて拙速な方向へと進みがちになります。時間を要することも厭わない客観的で冷静な見解こそが、以降の手順のムリ(無理)・ムラ・ムダ(無駄)を防ぐのです。

 次は手順2についてです。
 問題を明らかにしたら、その問題がなぜ発生しているのか、原因・背景・経緯を分析し、それらの要因を絞り込むことが次の手順です。この原因分析は、PDCAサイクルをスパイラルアップさせるための基盤となります。原因の判断違いは、それ以降の手順が徒労に終わることを意味します。私が実践している分析作業では、次の二つのステップを踏むようにしております。
 先ず、原因と思われる項目をリストアップすることです。それも、可能な限りたくさん出すことを意識したいのです。この段階では、質より量といえましょう。
 次のステップは、知恵の絞りどころになります。キーポイントが二つあります。
 一つは、原因の原因を追求することです。つまり原因Aであれば、原因Aの原因、つまり原因Bの追求です。さらに原因Bの原因である原因Cへと連鎖させて考えることで、問題発生の本質的原因が明らかになってきます。このやり方を5W法といいます。原因Aに対して、WHY(何故?)を5回(WHY→WHY→WHY→WHY→WHY)も繰り返して、真の原因により近づけていこうというやり方です。WHYという問いかけを繰り返すことで、問題発生の原因を掘り下げて、本質的で根源的原因に辿り着くことができます。対症療法だけで済まさないで、同じ問題を繰り返さない根治療法を追求したいのです。問題解決のあり方は、その時々の状況に応じて対処することになりますが、本質的側面に着手しなければ、喉元過ぎた段階で再発生する可能性が高くなるでしょう。同じ愚を繰り返さないためにも、様々な分野で応用可能な5W法をもっともっと活用するべきだと感じております。
 もう一つは、整理整頓してまとめあげた原因一つひとつの相関関係にも目を向けて体系化することです。そうすることで、複数ある原因の優先順位や原因それぞれの関連性が見えてきますから、以降のステップである対策案列挙(手順3)、対策案比較選択(手順4)がより円滑に進められるでしょう。より的確な対策案の選択が可能になります。

 右肩上がりの成長神話が崩壊してから、経営資源の効率化と即効性がマネジメント推進上の優先的目標になりました。その結果、時間を要する根治療法が敬遠されて、目先の対症療法を容認する傾向が促進されたのです。WHYという問いかけが疎まれてしまいました。最近気になることの一つに、企業不祥事が繰り返されていることがあります。それも、“あの一流企業が再び……”、“えっ…、あの企業が……”という具合に…… 。そして、官公庁や各種団体までもが、同じ不祥事を繰り返しているように見受けられます。問題が発生した時、その多くは対症療法から着手するでしょう。しかし、同じ轍を二度と踏まないように本質的・根源的原因を解決する根治療法を、同時に進めていかなければいけません。有名企業や行政機関の相変わらずの体たらくからは、口先だけの抽象的対症療法で嵐が過ぎ去るのを待っているとしか思えないのです。そんな問題意識が、5W法を思い出させてくれました。“5W法よ、永遠に!”と声高に申し上げたくなったのです。

 最後に、私の初心話を初公開させて頂きます。今だから笑いを交えて紹介できる話ですが、何とも嘆かわしい未熟な時代の実話なのです。過去の赤面話としてではなく、自戒の教訓として公表したいと思います。
 5W法の5W(WHY→WHY→WHY→WHY→WHY)を、5W1Hの5W(WHAT、WHY、WHO、WHEN、WHERE)と誤解していた時期がありました。教育担当なりたての頃です。私の担当する中途採用の新入社員研修で、「5W法の5Wは、5W1Hの5Wと同じです」とやってしまったのです。当然のことですが、直ぐに先輩講師からチェックが入りました。それ以降どのような心境で進めたのか、今でも忘れることはありません。
 当時は、教材研究はもとより、準備のイロハも分からないままに、講師業務を担当しておりました。決して消えることのない、私の“初心忘るべからず”の第1号ですね。場所も光景も、そしてその時の心情も鮮明に残っております。この経験以来、準備万端調えることを、6W3Hで行動レベルまで落とし込んだ具体的準備を、誰よりも早期着手という指針のもとで続けております。

                                                   (2019.2.18記)

エッセイ183:この道はいつか来た道~人のふり見て我がふり直せ

 北原白秋(詩人:1885年~1942年)をご存じない方はいらっしゃらないでしょう。「からたちの花」を始めとして「ペチカ」「あめふり」「あわて床屋」「柳河風俗詩」など、数多くの詩が愛唱歌として作曲され、そして合唱曲として作曲・編曲されており、学生時代に好んでハモった(合唱した)思い出があります。とりわけ馴染みが深いのは、「からたちの花」と「この道」、そして「柳河風俗詩」でしょうか。最近は“この道は、いつか来た道”という件(くだり)が、脳裏を行き来することがあります。恐れ多いような気もしますが、その理由を呟いてみたいと思います。

この道はいつか来た道~人のふり見て我がふり直せ

 新年度の4月になると、次のようなマスコミ記事を目にすることがあります。「新社会人さん、ここに気を付けましょう」ランキングです。ランクインされる項目は、挨拶、言葉遣い、仕事の進め方の基本、積極性などの行動姿勢・取組姿勢に関することがほとんどです。報道されるまでもなく、新入社員の配属先において、先輩諸氏の似たような批評を耳にします。私が社会人になってからの50年間、言い方は違えども聞かされ続けている表現があります。“最近の若者は、……… が出来ていない”、“今年の新入社員は、……. に問題がある”などです。先ほど紹介した「新社会人さん、ここに… 」ランキングと、その内容は変わりありません。それらの発言は、経験を積んだ先輩の成長した証であり、その位のことが言えて当然だと思うのですが……。
 このようなこともあります。仕事遂行能力がレベルアップして、所属組織での存在価値が高まってくると、上司や組織運営に対する不満や批評を口外するようになることです。それだけ実力が高まった証拠ですから、そのこと自体に苦言は呈しませんが、チョッピリ考えさせられることがあります。その方々が、批評した上司の後釜として同じ職責を背負った時に、部下や後輩から同じような不満や批評を浴びてしまうことです。かなりの頻度で見てきました。そのような壁を乗り越えて成長するのが人生ですから、謙虚な姿勢で対処することを願うばかりです
 取りあげたケースをウォッチしながら、次のような天の声が聞こえてくるのです。“ちょっと待ってよ。そういうあなたが新社会人だった当時はどうなのよ?”、“あなたが抱いていた同じ不満を、あなたの部下に感じさせていませんか?”という素直でストレートな声です。
 私はある時、それと同じような実態の自分の姿を恥じたことがあります。正に、“人のふり見て我がふり直せ”であり、“新人たちが歩んでいる道をあなたも歩んでいませんでしたか?”という自問なのです。“実は、私もそうだった”と謙虚に自覚することで、発する言葉の中身を考えるようになるのです。裏表の見解を併せ持って接することで、それまでと異なる物語が描かれていくのです。この道はいつか来た道であり、ほんの一時心に赤信号を灯して立ち止まって我が身をふり直し、後輩たちと共に考える大人でありたいと思うようになりました。 
 “人のふり見て我がふり直せ”とは、他人の言動の善悪を見て、自分自身の言動を反省して、改めるべきは改めなさい、という教えです。新社会人や中堅クラスの後輩の歩く未熟な道は、私自身がいつか来た道であり、場合によってはいつか通る道なのです。そのことを前提として、人のふりを見たなら、先ず我をふり直して歩んでいくべきだと思います。
 何年も前から、人生経験を積み重ねた中高年や高齢者の目を覆いたくなる行動、耳を塞ぎたくなる言動には、ガッカリさせられるだけではなく、胸が痛くなるほどのことが起きています。社会を背負って立つ真面目な若人に申し訳なく思います。幾つになっても不完全であることに変わりはありませんが、「さすが人生経験豊かな先輩…」と言われる日常を目指したいと思います。イヤなものを見聞きしたら、「この道」(作詞・北原白秋/作曲・山田耕筰)を口ずさんで、穏やかな心で我が身をふり直したいと思います。
                                                  
                                      (2019.2.4記)

エッセイ182:私の気づきは、「基本の大切さ」と「考えることの必要性」

 前回のエッセイでは、新入社員教育のあり方を、それまでの経験則や先入観から離れて、ゼロベースから見直した経緯と着眼点を中心に取りあげました。見直しの根っこには、新卒を含めた薬剤師の採用難が続いていることがあげられます。要員確保という難題が、常に頭から離れません。人材紹介会社にすがったこともありましたが、結局は自力で解決するしか道がないことも教わりました。あれこれ手を打ってはみますが、発芽するまでには至らないのです。原点に返って、新卒薬剤師の採用基本コンセプトを再定義して、一人ひとりの自立促進を啓発するやり方にこだわりました。
 薬学生の採用に関わって20年近くになります。10数年前からは、その時々の就職活動で感じた問題提起と方法論を中心に、長期的視点で共に考えるコンサルティング手法の採用活動を続けて現在に至っております。しかし、岩手県沿岸の薬剤師過疎地では、努力しても思うような実績に結びつかないのが実態です。それでも基本コンセプトは変えることなく、知恵を出して新たなやり方にチャレンジしたのが3年前になります。決めつけていたデメリットを逆手にとり、地域に根付いた小企業だからこそ実施可能なオンリーワン志向の会社見学会を企画して、「なかたシップ」(参照:エッセイ160回)と命名しました。逆転の発想の一つかもしれません。ちなみに弊社のメリットは、「フットワークの良さ」、「意思決定の速さ」、「全社的意思共有レベルと協力度の高さ」、「築き上げた他職種&多職種連携と相互支援実績」、「地域包括ケア先進地域の薬局」と認識しております。
 なかたシップは3年間で6開催しました。参加者の多くは、弊社の選抜選考試験を志望してくれています。初めて釜石を訪れた首都圏の薬学生からは、釜石エリアにおける地域包括ケアの進捗状況、多職種連携実態を目の当たりにして、“それまで抱いていた薬局薬剤師業務の可能性に対する閉塞感が払拭された”、“やる気が湧きました。それが一番です”という声を頂きました。今年度2名に続いて、平成31年度も3名の新卒薬学生が入社予定です。そんな3年間の手応えが、新入社員教育の抜本的見直しを後押ししてくれたと思います。
 今回のエッセイは、新任薬剤師Mさんの新入社員研修レポートを紹介しましょう。Mさんとは、就職活動のアドバイス、Mさん自身が立ち上げたサークル活動への支援を通して、4年生の時から関りがありました。回りまわって、同じ会社で学び合う間柄になったのです。
 お願いしたレポートは、以下のような問いかけになります。

  ●平成30年度新入社員導入研修も、残すところ一開催になりました。
   この数ヶ月間を振り返って、あなた自身が感じたことや気づいたことを中心に、
                             新入社員導入研修のレポートをお願いいたします。
   研修内容を、さらにスパイラルアップするための参考にすることが一番の目的です。
   自分自身の言葉で表現してください。イッパイ書き出してください。

私の気づきは、「基本の大切さ」と「考えることの必要性」

 企画し運営する人財育成責任者として、身につけて欲しいこと、気づいて欲しいこと、理解して欲しい本質的な側面は、あれもこれもと欲張り満載になります。それは当然であり、同志に対する期待度の表れなのです。しかし、私自身の50年前の姿を客観的に省みれば、あれもこれも身に付けることは“無理偏にゲンコツ”であることが明らかです。無理を承知で詰め込みを繰り返せば、押し付けと受け取られモチベーションを下げてしまいます。ここは、“焦らない”、“怒らない”、“威張らない”の三ナイ精神で、消化不良にならないように、育成目標の優先順位に沿った状況対応が基本と考えるようになりました。私の場合、「問題解決の思考プロセス(観る、聴く、感じる→考える、組み立てる、掘り下げる→表す、伝える、説得する)の理解と共感」、「修破離の理解」、「行動と意識をセットで革めることの本質の理解」の三点を、上位三項目としております。将来無くてならない人財の重要な必須要件でありながら蔑ろにされていること、その真意を理解するまでには時間と経験を要することが、優先順位の上位三項目とした理由の根幹なのです。
 Mさんのレポートから、平成30年度新入社員教育の手応えを感じております。以下、レポート内容の全文を紹介したいと思います。平成31年度は、さらに充実した仕組みにするという気持ちを、一層強くしてくれました。


 研修を振り返って大きく2点、①基本の大切さ、②考えることの必要性に気づくことができた。
 ①基本の大切さ
 研修初日の「入社3年間は徹底した基本修得の3年間にしよう」という言葉を皮切りに、研修では基本が身についていないケースや真のプロとアマ(プロではない)との違いなどを考えて基本の重要性を考えた。
 基本が大切なことくらい誰だって分かっているから、本来ならこんなことはスルーされるが、研修中は何度も基本の大切さに触れた。それには何か理由があるはずだと考えた。それはおそらく、なぜ基本が重要かを聞かれたら答えられる人は少ないからではないだろうか。また、基本が身についていない人(プロではない人)ほど他人のせい、つまり他律要因にしまいがちになる。他律要因が多ければ、PDCAサイクルはうまく回らずに失敗を繰り返していく。さらに、今の私はプロなのだろうかと考えた。世間から見れば薬のプロと思われる・見られているかもしれない。しかしながら、まだまだ知らないことが多く、先輩方と比べたら経験値も少ないため、まだ本当のプロではないと感じる。だからこそ、真のプロを目指すべく素直に教えを乞い、必死に学んで基本修得の徹底を行う必要があるのだと思った。
 ②考えることの必要性
 まことプロジェクトを通して考える意識は段々と身についてきたが、今回の研修期間では登場した重要な鍵となる言葉(文章)が言わんとしていることは何か、意味を自分なりに考えるようにした。そうすることで、日常に溢れる教えの根源や日々の成功または失敗の出来事の要因となっていることに気づき、共感・納得する、その繰り返しだった。
 例えば、私達は「自分に厳しく、人には優しく」という言葉をよく耳にする。優しさ・厳しさの定義が若干異なるかもしれないが、この言葉は研修でいうところの「自分のこと:相手のこと=49<51の姿勢」や「克己心と自助力」ではないだろうかと考え、その言葉に納得した。
 ところで、研修期間中、井上さんがこれ程までに考える意識を身につけさせようとしているのはなぜなのか。私の答えは薬剤師の役割を全うするため、患者さんの声を傾聴するために必要だからと考えた。薬剤師法の第一条には「薬剤師は調剤、医薬品の供給、その他薬事衛生をつかさどることによって…」と書かれている。そのうち、薬局薬剤師が大きく関わるのは調剤の部分である。処方せんに沿って薬を正しく集めることが調剤であるなら、薬剤師ではなく、他の人間(下手したら子供)や機械にだってできる。しかし、調剤が薬剤師である理由なのはあれこれと考え、医薬品の適正使用と医療安全の確保を図ることができるからだ。その役割を果たすためには「考える」過程が外せない。また、患者さんが薬の持続時間を聞いてきたとする。その質問の裏には患者さんは、ある時間になって症状が出てきて不安を感じていたり、その時間をもとに調節して薬を服用しようと考えていたりする。加えて、患者さんが訴える症状は教科書通りに行かないことがほとんどだ。だから、私達は患者さんが薬剤師に伝えんとする意味全体(内容や気持ち、状況)を必死に考えて、イメージを広げ理解する。それができてやっと「傾聴」となる。傾聴するためには考えることが尽きない。考えが足りなければ患者さんはこちらに心は啓かない。つまり、信頼される関係は築かれない。
 さらに、考えることの必要性は、①基本の大切さで述べた他律要因ばかりではPDCAサイクルをうまく回せないことにも繋がる。他律要因が多くなってしまうのは考えが足りないことも関係してるため、自分を客観的に見て、自律要因を探す(考える)必要がある。よって、「考えること」は薬剤師の役割を遂行するため、患者さんの声を傾聴するため、目標達成・問題解決に必要だから、常に考えるように努めなければいけないのだと思った。
 研修期間で気づいたことは、普段の流れていくような業務中では、なかなか考え、気づき難い。だから、ふとした時に、ある経験をした時に、気づくことができるように ひっかき傷をつけられたのだと感じた。研修が終了しても、この傷を消さないように大事にしていきたいと思う。

                                                (2019.1.23記)

エッセイ181:人財育成は10年先(長期的視点)を見据えて誂える志事

 人は誰でも、さらに伸ばしたい長所・美点、改善したい短所・欠点を併せ持っています。その具体的な中身は十人十色であることはもちろんですが、状況によって長所と短所が反転することもあります。“禍を転じて福と為す”或いは“失敗は成功の因”的なことだってあるでしょう。生活環境や仕事環境、そして対人関係も、だから味わい深さ、不思議な趣き、そして面白味を感じることがあります。一度や二度の失敗で落ち込むことはないし、クヨクヨなんて不要と思うこともありました。
 課題達成の計画案、問題を解決する時の対策案にも、同じことが言えるのではないのでしょうか。知恵を出し合って決めた対案には、メリットとデメリットがあります。ですから、列挙した対案を比較選択する場合、メリットとデメリットを真剣に吟味して、それらを一つひとつ検討したうえで最終決定することが、実施結果を左右することになります。
 そのメリットとデメリットは、経営環境の変化で変わってきます。定例的に継続開催される行事や取組みの場合、実施することが目的化されてしまい、メリットが見失われるだけではなく、デメリットが表に出てきても見過ごされてしまうことがあります。どんな仕事でも、マンネリ化の可能性を秘めていますが、気づき難いだけなのです。そのような危惧を感じながら、平成30年度の新卒新入社員研修を見直しました。今回のE森は、その経緯と着眼点を取りあげてみましょう。

人財育成は10年先(長期的視点)を見据えて誂える志事

 一昨年の立秋過ぎになります。平成30年3月卒業予定の薬学生2名が入社することになりました。30年以上も新入社員教育を企画し運営してきましたが、教材はもとより、あり方や進め方も含めて、それまでのやり方を見直す決意をしたのです。見直すというよりも、ゼロベースから新設計図を描くという感覚でした。現状に対する不満や問題意識がそうさせたというよりも、マンネリ化したと思える私自身の行動姿勢が理由だったかもしれません。
 思い立ったら速攻屋の私は、着眼大局という視点を忘れずに、それまで実施してきた新入社員教育のメリットとデメリットを、つぶさに書き表しました。過去30年間の仕事経験や薬学生とのプロジェクト活動で感じたことをもとに、育成課題の兆候や教育ニーズの把握に努めました。その上で、“人材育成の仕組みと教育ニーズとの適合性はどうか?”、“目的・目標が明確か、そして適格か?”、“客観的なデメリットは何か?”など、それまでの経験で得たものから離れて、本質に向かって掘り下げてみたのです。入社後の日常業務における育成のあり方についても、作りあげる問題という視点で考え直しました。その過程で参考になったのが、2013年(平成25年)に11名の後輩から頂いたレポート『人生の先輩から見知らぬ後輩への伝言』です。そのレポートは、現在も関わりを持っている50才前半から30才前後までの現役ビジネスパーソンから新社会人への貴重なアドバイス集なのです。
 私が目指しているのは、目先のことに囚われないで、長期的視点に立った人財育成プログラムを誂えることです難題ですが、10年先、20年先を見据えたカリキュラムを編成することです。“問題意識を高める”、“掘り下げて考える”、“意思決定したことを公言し伝える”という、問題解決の思考プロセスの修得を進め方の中心に据えて企画し運営することです。“人間としての成長”を育成目標のトップに掲げて、相手の立場に立つことの難しさ、信頼と安心のコミュニケーション実現の難しさを体得する機会を、可能な限り組み入れることも意識しました。日程とカリキュラムを確定するまで、延べ数週間以上かけて土台作りに腐心したと思います。その過程で考えた運営指針も紹介しましょう。
 「内発的自己動機づけの持続・継続・スパイラルアップ」、「一人ひとりが考える。考えたことを発表する。熟議して意思決定する。決めたら誠実に実行する。行動事例をコツコツ地道に積み重ねる」、「応答の対話で、理解&共感&共鳴へと紡ぐ」、「人財育成プロセスのストーリー化」、「自主運営、自力解決」、「成長=根気×積み重ね×継続の具現化」「復習と振り返りの充実」、……。これらの指針の主語は、私であり受講対象者になります。
 抜本的見直しの志事を通して、何処に目をつけるのかという着眼点(視点)、そして理念を具現化できる業務遂行能力の重要性を感じました。“だから人財育成なのだ”、そして“人財育成はエンドレスなのだ”ということを、改めて認めさせられた気がします。

                                       (2019.1.17記)

エッセイ180:理解しておきたい組織運営に関する基礎知識

 2018年(平成30年)は、体調の芳しくない年でした。
 安定していた血圧でしたが、昨年(平成29年)10月辺りから高めが続いたことで、それまでの降圧剤が変更になりました。併せて、しばらく血圧を測定することにしました。1月半ばから2月下旬まで、1日5回(起床時、10時、12時、16時、20時)を目安に、実態把握に努めたのです。日々の血圧の状況が分かったことで、メンタル面にも良い影響が出てきたようです。実態を正確に把握しておくことの重要性を、改めて突き付けられたのだと思います。
 一番のストレス源となったのが、今年1月半ばから気になりだした不整脈です。2月のある日、今まで自覚したことのない徐脈が続いたのです。1時間おきに数分間続いたという感覚でした。気が動転していますから、もっと短い時間、せいぜい10秒前後だったかも知れません。また、1日に何度か左胸に痛みを感じ出し、不整脈に対する不安感が痛みを増幅しているような気にもなりました。初めて不整脈が気になったのは5、6年前だったでしょうか。もっと以前だったような気もします。数年おきにホルター心電図検査をしておりますが、2年前の検査では、不整脈は出ているが気にする必要はない、との診断でした。しかし、不安が消えることはありません。些細なことでも気にする性質ですから、検査可能の病院で心臓CT検査を行いました。検査は3か月後でしたが、血管のつまりもなく“90才になっても検査は不要”という結果でホッとしております。
 ゴールデンウィーク過ぎからは耳鳴りがひどくなり、今でもその状態は変わっていません。6月からは、午前中にめまいを感じることがあり、日課のウォーキングも飛び飛びになりました。春先の右足首の痛み、春秋の腰痛は、判を押したように毎年出てきます。また、逆流性食道炎、慢性胃炎の影響か、食後の胸焼けや鳩尾(みずおち)の鈍いような痛みが気になる時もあります。
 毎日パソコンに向かいます。そのせいでしょうか、目のピントが合い難くなりました。年数回ですが、目の真ん中あたりに、菱形の縞模様に似た影が眼球の動きに合わせて行き来することがあります。30分ほどで元に戻りますが…。それ以外にも違和感を覚える症状が、いくつもあります。
 振り返ってみると、体調が芳しくなかったことから、総合病院を受診したのが57才前後だったと記憶しております。私が感じている体調の状況は、言葉を変えながら通院の度に訴えました。ひと月半後、以降は開業医への受診を勧告され、併せて、どこか突き放すような皮肉交じりの言い方で、メンタルクリニックへの受診勧奨もされました。それまでの治療の過程で私が訴えたことをどれだけ理解して頂いたのか、釈然としないまま病院を後にしたことは、今でも忘れておりません。医師の多忙さは理解しているつもりですが、それ以降、症状を訴えるにしても、何かを期待することは控えて、簡単な報告で済ますようになりました。
 個人的な前置きが長くて恐縮です。今年1年間の私の体調を披露したついでに、医療従事者のコミュニケーションの原点について、患者という立場の私的な見解を要望という形で申しあげたいと思います。医療行為(診察、診断、治療)の過程では、不安や関心事を含めた患者ニーズの把握が基本の一つではないでしょうか。そんな当たり前が、何か蔑ろにされてはいないかと気になることがあるのです。患者とその家族のQOL向上・自立化支援を柱の一つとして、ニーズをキチンと把握した上で、柱に沿った説明と対話をして頂きたいと思うことがあります。それも患者本位で、より分かり易く、納得し共感できる表現でお願いしたいのです。今年のE森では、コミュニケーションの質的向上のあり方を、共に考える姿勢で数多く取りあげてきました。常に頭から離れないのがコミュニケーションのあり方ですから、今回も取りあげてしまいました。それだけ、気になってどうしようもないからです。これからも気づいた都度、共に考えて議論したいと思います。

 さて、平成30年の締めは、組織運営に関する基礎知識を取りあげてみましょう。ここ十数年間、それらに対する無理解が多いと感じているからです。元来、就職活動のスタート時期に、本質的教育課題として取りあげるべきテーマだと思います。百歩譲って、社会に出た時に、企業人の基礎知識として学んでおくべきことなのです。薬局業界と薬学生の緊急課題の一つだと感じています。

理解しておきたい組織運営に関する基礎知識

選んだ理由が何であれ、従事した仕事のプロとして立派に任務を果たしていくためには、組織の目的、役割分担やチームワークに関する基礎知識を理解しておくことが重要となります。
全ての組織には、必ず目的があります。目的を達成するために、チームワークというやり方で仕事が進められています。当たり前に使われているチームワークというのは、組織の共通目的に向かって、所属するチームメンバーが自分の役割を認識し、役割をキチンと果たし、場合によっては相互に協力し補完し合いながら、共通目的を達成していこうとすることです。
 例えば、野球というチームスポーツで考えてみましょう。先ず、「試合に勝つ」或いは「優勝する」という共通目的があります。その目的を実現するために、投手、捕手、内野手、外野手、指名打者といったようなポジションがあります。さらに、攻撃する時の打順というポジションもあります。それぞれに基本的役割があって、メンバーは自分自身の役割を認識して最善を尽くします。さらに、その時々のゲーム全体の流れや状況に応じて、臨機応変な対応をしながら、チームを勝利に導いていくことが任務なのです。これが組織運営の基本ということになります。
 会社の仕事についても、同じことが言えます。
 それぞれの所属する会社には事業目的があります。代表的なのが、企業理念や方針と呼ばれるものですね。数多くの同業他社との競争の中で、その事業目的を効果的・効率的に具現化するために、多機能化した役割を分担し合う分業体制をとっています。その仕組みが組織(或いはチーム)です。会社における配属先は、その組織の一つということになります。プロ野球と同じように、会社の事業目的を実現するために、会社の各組織のメンバー一人ひとりが、それぞれが分担する役割を理解し認識して、お互いが協力し合うことによって仕事が進められています。会社の中で分担する仕事を職務と呼び、それはスポーツのポジションにあたるものです。
 どのような業種業態であっても、多くの場合、一人の力で完結するという仕事は、あり得ないと思います。自己完結型と思えるような仕事であっても、その仕事は、会社全体の中のある部分を担い、会社全体の活動の中に反映されるものです。どんな仕事であれ、個々の仕事はそれぞれに役割を担い、それぞれが個々に結びついています。また、仕事への姿勢や行動などは、周囲の人、職場の雰囲気に影響するものです。あなたの仕事も、何らかの形で他の人の仕事に結びつき、何らかの影響を与えています。このように、直接的にも間接的にも、仕事はチームワークによって進められており、相互に影響し合っていることになります。
 ですから、一人ひとりが自分の役割を責任もって果たすことが第一です。しかし、そのことは自分の役割のことしか考えないということではありません。個人の仕事は全体につながり、全体の動きは、個人の仕事に影響してきます。自分の仕事をしっかりと行うと同時に、全体に目を向け、常に自分のやるべきことを捉えながら動くことが大切なのです。一人の力では達成不可能なことでも、協働という仕組みのもとで達成することが可能になるのが、組織運営のメリットと言えましょう。
 もう一つ大事な視点があります。チームワークのウイークポイントの存在です。仕事は流れですから、私の仕事と次の仕事には見え難い隙間があるということです。わずかなグレーゾーンといえましょうか。そこには、ミスの芽が存在するのです。誰の役割でもない(=誰の責任でもない)隙間が、思わぬアクシデントやミスの温床であることも現実問題として存在します。ですから、そういう認識を持って対処することを怠ってはいけません。そのような理由から、協働意識を育むことが人材育成上の重要なテーマになると思います。

 人類は、それまでの長い経験を通して、それぞれの組織を秩序よく運営するためには、何が一番大切であるかという基本を学んできました。今回のエッセイでは、その当たり前の基本を取りあげてみました。この基本は、ビジネスパーソンが理解しておくべき前提条件であり、企業規模の大小や業種業態を問わない企業運営の土台なのだと思います。
                                         (2018.12.10記)

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