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エッセイ189:中小企業の生き残り策は、何をおいても人で差をつけること

中小企業の生き残り策は、何をおいても人で差をつけること 
 
 9年前の4月から、最後の職場にすると決めた中田薬局での仕事がスタートしました。それまでは規模の異なる企業での仕事でした。最大社員数数千人から二百名ほどの企業とは、大きな幅があったと思います。中田薬局の場合、釜石市内に4店舗(当時は5店舗)と規模は一番小さな企業ですが、私の力が最大限発揮できるという予感を持ちました。その理由は、現社長(当時は専務取締役)の考え方にありました。目先のことにとらわれるのではなく、本質を見据えて長期的視点で薬局経営を志向している点に、それまでの企業との決定的な違いを感じたことが思い出されます。具体例の一つが、社員教育への投資を惜しまないということです。“教育環境を整えるのは社長の任務”ということを、何度か耳にしました。薬局の未来は、薬剤師一人ひとりが主人公となって創造するものです。自ら考えて、率先垂範行動で造りあげるものです。私が10何年も前から提言していることの一つが、『自社の社員を自前で育てようとしない企業に明日はない』ということですが、中田薬局でなら私の思いが実現できると判断したのでした。 
 あくまでも私的見解ではありますが、当時の調剤薬局業界では、薬局間における患者サービス&生活者サービスの優位差はほとんど感じられませんでした。それも低いレベルで… 。私自身が患者として幾つかの調剤薬局を利用して、そんな思いを強くしたのです。仕事そのもので差がつかないのであれば、経営資源の核である“社員一人ひとりで差をつけるしか道はない”ということを、つくづく身に沁みて感じました。会社の生き残る道は、社員教育を上位優先課題として位置づけるということです。そして、中田薬局であれば実現できるという直感的な確信もありました。

 生き残り策を前進させるためには、社員教育の旗振り役であり実質的推進役である教育担当者の育成が必須要件です。自社の社員の中から、ゼネラリストの人事教育担当を育成して、研修も含めた人材育成機会を自前でカスタマイズし、実施できるようにすることです。何故なら、教育担当の実力が社員教育の成否を決めるからであり、外部コンサルタントによるアウトソーシング主体では、社員のやる気を引き出し続けることは不可能に近いからです。自前でやる基礎教育・実践教育、視野拡大・最新情報収集・最新技術修得を目的とした対外的教育、自主自立奨励型の自己啓発教育のトリプルエンジンを連結したトライアングル仕様が、育成ニーズに即した人材育成システムだと思います。それも画一的に回すのではなく、社員一人ひとりの現有能力と自発的やる気を鑑みた個別対応が理想形なのです。そのような難易度の高い実務ですから、教育担当者の育成には、かなりの投資と時間(年月)を要することになります。何しろ、現場の業務に精通していなければ、仲間からも足元を見透かされてしまいます。さらに、経営理念や年度方針の実現が前提でもありますから、それなりのキャリアを積んでの職務遂行能力を保有していなければ、この仕事は務まらないのです。
 それではどこから、どのように手を付けたらいいのでしょうか。教育担当としての実務キャリアという側面で考えてみましょう。教育担当者の役割・機能は多岐にわたっています。(参考:EDUCOの森13回)その中で、私自身が一番時間とエネルギーを費やした研修会やセミナーの企画・運営について、私の歩んできた道の一部を紹介したいと思います。
 企画といっても、教育問題の兆候とその原因を把握して、育成ニーズを明らかにすることからスタートします。往々にして、実施することが目的の教育機会に出会うことがあります。そんな無為・無益・無駄・無責任な企画は、何があっても許してはいけません。育成ニーズとその理由によって、その後の対処法に大きな違いが出てくるからです。納得するまで追求する姿勢で向き合いますから、この段階から時間とエネルギーを使うことになります。また、外部教育団体の既成研修に派遣することは極力避けて、自力で誂えて自力で運営することが基本方針でしたから、研修用教材も一から勉強して自前で作り上げました。研修を実施するまでに2年計画で取り組んだプロジェクトにも参加しました。それも複数回経験したと思います。GOサインが出るまでの緊張感はハンパなかったですね。そんな地道で愚直な積み重ねを5年以上も続けていると、研修企画・運営の基本と効果的・効率的な進め方のコツが身につきました。気がつけば、それぞれのニーズに沿った企画を短時日でカスタマイズ出来るようになったと思います。これらの職務遂行能力は、いまだに衰えていません。だからでしょうか、問題意識の強弱にかかわらず、将来活用できそうだと判断した教材やカリキュラム作成は、楽しみながら苦も無く続けられているのです。ライフワークになりました。
 教育担当のプロへの道のりは、5年先10年先まで延々続くと覚悟して、最初は50点(100点満点)で構いませんから、とにかく研修を企画し運営しながら、ディレクター、インストラクター、コーチとしての腕前を上げることです。質など気にしないで、量をこなすことです。情熱(パッション)を前面に出して、どれだけチャレンジしたかで決まると思います。申し上げたいことは、目の前の課題から逃げないで(=キチンと向き合って)、土台からコツコツと経験を積み重ねていけば、研修も含めた人材育成機会を自前でカスタマイズ出来るようになるということです。どれだけの年月を要するかは、人それぞれ異なるでしょう。積み重ねる過程での仕事環境も含めて、幾つもの要因が影響してきます。5年の人もいれば、10年以上かかる人もいるでしょう。納得するまで実践し続けた結果ですから、本人の引いた合格ラインまで継続するしか道はありません。諦めて投げ出す人も出てくる世界なのですから …… 。
 次は、運営面について考えてみましょう。
 研修会などのOffJTでは、受講希望者が1名であっても実施しておりました。一方、受講者が18名を超える場合、研修内容によっては開催回数を増やして実施するようにしております。例えば受講希望者が33名の場合、18名と15名に分けて2開催するということです。研修内容にもよりますが、18名を越える受講者では、責任を持って研修の品質を維持することが不可能という理由からです。
 私の主宰する塾では、古い時代の学校形式ではなく、受講者をグループ分けして進めております。18名の場合、1グループ6名で島を作り3グループにします。1グループの最大人数は8名が原則で、受講者数に応じて都度編成しております。受講者全員がお互いの顔を見ながら、“我以外皆我師也”を実感出来るようにしたいからです。
 社員教育は量が一番だと考えています。回数です。特に若い世代では、手当たり次第で構わないから学びの場に極力参加させることです。そのために、教育担当は、OffJT、OJT、自己啓発を問わず、繰り返して学ぶ機会を作ることに知恵を絞って頂きたい。そして、学ぶことの意味を何度も問いかけて、学ぶ機会への積極的参画を促すようにすることが重要だと思います。
 受講者の理解度をより高めるためにやり続けている作法もあります。担当する研修の実施要領書の作成です。研修目的達成のために、必ず研修全体と各カリキュラムをストーリー化します。実施要領書は、その脚本であり、インストラクターの虎の巻になるのです。この作法は私の情熱の証しであり、実践不能に陥ったら手を引くと決めております。教育担当としてのパーソナルインフルエンスの原点は、何と言ってもパッションでしょう。情熱なくして、人財育成なしですね。

 エッセイ189回の内容は、長年の研修企画&運営体験から学んだ結果の一部になります。教育担当者育成を意図したエッセイは、今まで培ってきた考えやノウハウ提供を目的の一つとしてスタートしましたから、関連しそうなエッセイは何度となく呟いていると思います。興味を持たれた方は、改めてひも解いて頂きたいと存じます。
                                                  (2019.4.14記)

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