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エッセイ133:私の初心からの賜りもの

 元祖ID(Important Date)野球を実践した野村克也氏は、名選手であり名監督でした。ボヤキ風のものから、卓見と感心させられるものまで、数多くの野村語録なる名言が存在します。私にとりましては、ビジネスパーソンの行動指針として共感できるものがいくつもあるのです。
 その中には「原因と結果の関係」に相通じる語録がありました。
 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」です。後半部分の“負けに不思議の負けなし”は、正に『悪因悪果、自因自果』であり、ビジネスに置き換えると“失敗に不思議の失敗無し”なのです。悪因悪果、自因自果を肚に落とし、成功確率の高い問題解決の基本手順(PDCAサイクル)をキチンと回すこと、スパイラルアップすることが、学習効果の高い集団のあるべき姿なのだと思います。正に仕事の進め方の1丁目1番地ではないでしょうか。
 能役者・能楽師の世阿弥の言葉に、「初心忘るべからず」というのがあります。この有名な格言の意味は、「自分の芸が未熟であったことを、いつまでも忘れるな」なのです。その真意は、芸は未熟なのに人気が先行して、その結果“芸が優れている”と勘違いしてしまう、そんな若い役者が出てくることがあります。その役者に対する戒めが、世阿弥の本意だったのです。
 私には、忘れられない初心、忘れてはならない初心が、数えきれないくらいあります。特に昭和60年代から平成初期までの期間は、私の初心の溜まり場でもありました。人事教育の仕事に携わっての30数年間を振り返って、さらに多くの初心を見いだすことができます。新社会人なりたての昭和44年(1969年)代まで遡りますと、赤面ものの未熟な姿のオンパレードになりそうです。この年になっても、未熟と思しき顔が出てきます。
 だから、『謙虚』と『真摯』の四文字を心に刻んで、一生学ぶ人であり続けようと思います。

 今回のエッセイは、私の初心からの学習成果事例を紹介したいと思います。エッセイ40&41回の再来です。

私の初心からの賜りもの~仕事の進め方の基本的フォルムの修得
 
 以前のエッセイでは、“一生忘れてはならない私の初心”の具体例をいくつか披露させて頂きました。時を経て振り返って実感したそれらの初心(未熟な私)は、上を向いて前に歩を進める推進力となってくれたのでした。言葉に表せそうにもない閉塞的うつ症状を感じながらも、何とか踏ん張って、目の前の仕事や課題から逃げずに向き合って対処しているうちに、背中をそっと押してくれる支援的賜りものが増えていることがありました。それらは、後々になって気づいたものがほとんどでしたが。
 実力も精神力も十分に備わっていなかったひよこ時代は、課題を提示されて直ぐに、何をするのかという目先の方法論だけが気になりました。“何よりも競争に負けられない、誰よりもスピード最優先”が大手を振っていた時代でしたから、先手必勝しか頭にありません。一番に気になるのが周りの方々の対処法で、それを裏返して考えてみれば、自分自身の未熟さ、自信の無さの表れだったと思います。偏狭な視野からの思いつきに先導されて、結局、成果を見出せずにスタート地点をウロウロしている自分がおりました。
 専任教育担当なりたての頃の仕事のあり様も、同じ轍を踏んでいる状況でした。もう1年もすれば不惑世代に手が届く年齢にも拘らず、何とも情けない状態だったと思います。その頑迷固陋(がんめいころう)な状態に楔を打ち込んでくれたのは、藁をもすがる思いで学び続けている中から賜ったものでした。そんな実態との縁切りが成立するまでに、5年以上は要したかもしれません。サヨナラするために、延べ数百万円以上の自己投資も厭いませんでした。“今が人生の瀬戸際”という危機感と、“こんなことで負けてたまるか”という一途な目標必達魂が、学び続ける原動力になっていたのだろう、と振り返っております。

 楔を打ち込んでくれた賜りものを一言で表現すれば、“仕事の進め方の基本的フォルム(型)”の重要性を見出すことができたこと、それらが徐々に身についたことでしょうか。新たな課題に取り組む時、何ものにも代え難い賜りものであることを納得させてくれたのです。
 以下、その具体的な中身を列挙してみましょう。

 最初の具体的な賜りものは、仕事を進める上での考え方、あり方、姿勢の基盤の必要性に気付かされたことでした。その根幹となったのが教育理念です。数年もの間、何度も何度も練り直しました。「教育の基本理念(人財育成の着眼点)」(エッセイ122・123回)、「教育活動の基本原則」(エッセイ124・125回)として、現在に至っております。さらに、“教育とは何か?”という自問への回答として、「EDUCO TREE」(エッセイ119回)を植えました。

 仕事遂行上の賜りものには、次のような行動指針が挙げられます。
 基本中の基本は、PDCAサイクルをスパイラルアップし続けることに尽きます。そして、6W3H、報連相、成功確率の高い問題解決の基本手順の要点などを、常にお供に従えることです。
 実行する段になったら、準備万端整えることを、何が何でもやり遂げることです。研修講師であれば、一ヶ月前にはいつでも実施可能の状況にすることを、イの一番の指針と決めました。

 どのような形態であれ、教育機会を企画する時には、「研修企画検討表」に則って進めることを基本原則としました。教育問題の兆候と教育ニーズを四直四現主義で明らかにするところから始めます。実施することが目的の教育機会は、無駄以外の何物でもありません。それだけは、絶対に避けなければいけませんね。
 GOサインの可能性が見えてきたら、ねらい(目的、目標、意図)を明確にすることが何よりも重要となります。平行して、教育機会全体を小説・映画に見立てて、一つの作品としてプロデュースします。ねらいは全体だけではなく、各単元、各カリキュラム別に明らかにしていきます。教材や資料は、ねらい実現に沿って念入りに用意します。これらの作業には、相当の時間を要することになります。
 講師として皆さんの前に立つ時には、私の基本スタンスと進め方を明示することから始めます。A-4版1枚にまとめた“WELCOME、いのうえ塾へ”を配布して、共感・共有を意識しながら理解して頂くことに注力します。
 研修中の基本スタンスは、カウンセラー、ファシリテーター的な引き出し役、メンターという助言役、またある時はガイド、トレーナーとしての道案内役、場合によっては厳父役・慈母役というように、状況に応じた役割を心掛けております引き出すための「グルグル回りの対話」は、自然体でやれるレベルになりました。考えては自問自答することを常に要求することで、自己動機づけ意識を引き出したいのです。

 こうやって数えあげれば、かなりの賜りものの存在に気づかされます。それらが、今後とも基本的フォルムであり続けるのかは分かりかねますが、何事も決め付けることなく、状況に応じて見直す度量を持って日々対処することで、本質を外さないで考えられるようにもなりました。本質を外さないで状況対応することが可能になりました。現在の取り組みも、E森の執筆も、身についた基本フォルムからスタートしていると思います。状況が一変することも視野に入れながら、常にベストを目指して対処すると決めております。
 気がつけば、周りの方々がどうであれ、常に熱意と本気で全力投球することから逃げない私になれたと思います。また、突発的なアクシデントへの対応、スケジュールや方向性の変更への対応も、焦ることなく余裕を持ちながら全体最適で対処することが可能になりました。それらこそが初心からの貴重な賜りもののような気がしてなりません。近年とみに感じております。

                                                       (2017.1.10記)

エッセイ132:教育担当者に求められる基本要件(その2)

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 古希の誕生日からひと月になりました。いくつもの経験が積み重なり、それらが整頓されて積み上がったから、“それなんだよね。…… ”と思うことが増えてきたように感じます。エッセイの中で、そんな風景を自然と呟くことが一再ならずありました。これからもコツコツと右肩上がりで推移させたい、と考えております。
 潜在能力が開花したと実感する、“アッ、あれだ……”と気づく、そして“これで行こう…”と方途が見つかる、…… 。経験に優るものはない、と実感する時です。
 一方、何かを知りたければ、容易に検索できる時代になりました。経験の有無にかかわらず、ネットで検索した情報をコピペ(丸写し)しただけで‟理解できた“と勘違いしているケースが、非常に気になります。その行為に何の疑問も感じない実態は、もっと気がかりでなりません。だからでしょうか、10数年前からは、何よりも行動する(=やってみる)ことを奨励するようになりました。
 しかし、“経験に優るものはない”といっても、私自身の経験が他の方々に当てはまるとは限りません。そのような当たり前の理由から、同じような問題であっても、先入観で安易に当てはめることは戒めなければなりません。年配者の自慢話と押しつけにはウンザリでしょうから、観察力、傾聴力、感受性、想像力をミックス動員しながら、視野を広げて考えるように方向付けしております。そうすることで、状況対応の引き出しを増やしていけるのではないでしょうか。
 今回のE森は、教育担当者に求められる基本要件の2回目になります。これらは、私なりの経験と学びの産物です。この仕事に従事して20年目のまとめレポートを基に、何度か改廃して現在の内容に至っております。これも自力で策定されることをお奨めします。

教育担当者に求められる基本要件(その2)
Ⅱ.教育担当の行動指針  *詳細は添付ファイルを参照願います。

 1.人間的魅力を高めて、影響力を発揮できるようにすること
    ※周りの人たちに意識変革・行動変革することを発信し、影響を与え続けられる人になる!

 2.“必活仕掛け人”、“水先案内人”であり続けること
 3.オンリーワンのノウハウを作りあげる先駆けになること
 4.半歩先を歩いて、企業を取り巻く経営環境の変化・問題に敏感に反応すること

Ⅲ.求められる心構え・態度・スキル

 1.心 構 え
  (1)赤々と燃える成長願望を持ち続ける
  (2)自ら率先して学ぶ人になる:教うるは学ぶの半なり
  (3)良好な人間関係を作る:ヒューマンリレーション作りの達人になる
       *相互理解 → 相互受容 → 相互信頼 → 相互支持 
  (4)分りやすく的確・適切な言葉で話す:考えが貧弱だと、言葉も貧弱で分かりにくい
  (5)理解と納得の話し方をする:必ず結果とその理由・根拠をセットで
  (6)基本をよく知り、マネジメントに精通し、顧客の声によ~く耳を傾け、
          洋の東西の哲学(倫理)を知り、自社・他社を研究し、社員を知る
  (7)人のやる気の起こし方を知り、皆が生き生きとしている風土を目指す
  (8)人材育成・企業内教育に関する理論・技法を身につけ、言行一致を実践する
  (9)教育の要諦は、諦めずにやり続ける:「継続は力なり」、「積み重ねは力なり」、「根気は力なり」
  (10)「我以外皆我師也」という謙虚で真摯な共育魂を持つ

 2.態 度
  (1)情熱・本気
  (2)誠実・正義感・倫理観
  (3)共に考える姿勢:教育は共育なり
  (4)自分自身を客観的に観察できる冷静さ:離見の見
  (5)謙虚に看脚下:教わるとは?

 3.ス キ ル
  (1)教育理念と教育体系の構築、策定:教育とは?
  (2)教える内容の深い知識と技能:相手を納得させ、やる気を喚起する
  (3)教え方の知識と技能
  (4)人をひきつける対人関係能力、心に浸み込んでいくコミュニケーション能力
  (5)健全で柔軟な判断力
  (6)問題意識、好奇心、感受性、想像力
  (7)的確で適切な問いかけ、問題提起:「応答は問いに依存する」

                                                                      (2016.11.10記)

エッセイ131:教育担当者に求められる基本要件(その1)

 前回のエッセイでは、私の考える“企業内教育担当者の役割・機能”を取りあげました。今回から2連続で、さらに掘り下げた具体的な役割・機能を提案したいと思います。
 このレベルの見解を公言するまでには、相当な質量の経験と試行錯誤の積み重ね、幅広い職務遂行能力の積み上げが必要だと感じております。数年では難しいでしょう。10年は要すると思います。ここは、“僕の前に道はない。僕の後ろに道は出来る”(高村光太郎)、“隗より始めよ”(戦国策)、と肝に銘じてチャレンジしてください。
 「人材育成の基本課題は何か?」、「教育担当の行動指針」、「求められる心構え・態度・スキル」、「教育担当の能力要件」の4部構成ですが、今回は企業内教育担当者の役割の具体的課題編になります。

教育担当者として求められる基本要件(その1)

Ⅰ.人材育成の基本課題は何か?

1.社員一人ひとりの考え方や心構えを引き出すこと、革めること。そして、“自発的やる気”を喚起すること。
  
  (1)“健全な心構え・判断基準”を、しっかりと肚に落とすこと、落とさせること
     ・“人間尊重(Yの心)”を基本的信念に
     ・4S志向
        CS(顧客満足)/DS(生活者満足)/PS(患者満足)/ES(従業員満足)
     ・自己責任意識、目標必達魂、チャレンジ(リスクテイク)精神
     ・CSR(企業の社会的責任)の追求
     ・サステナビリティー(持続可能性)の追究
     ・コンプライアンスの必然性の理解と率先垂範
  (2)必ず行動変革へ結びつけること:仕事が教材(On the Job Learning)
     ・方針と目標を明確にして、全員に明示する
     ・目標達成のための方途を考える、考えさせる
     ・目標と具体的計画を合意する
     ・目標の進捗状況を確認しながら、納得するまで共有化する
     ・対話を通して、“背中を押す”、“誉める・叱る”、“勇気付ける”
     ・納期がきたら客観的に評価する。その結果を理由を添えてフードバックする
        *やる気=自己確信(自信)×自己動機づけ

 2.心を耕して、人間性を磨くこと。
        *自助力(自力で生きていける力)と共助力(周りの人と一緒にやっていける力)を身につけて、 
                                               “いつでもどこでも誰とでも協働できる人”を育てる。
   
  (1)謙虚に素直に看脚下することの習慣化、当り前化
  (2)利害関係にとらわれない、お役立ちの心を持つこと
  (3)人の痛みを知り、その痛みを自分事として、自己を厳しく律すること(自律心)
  (4)個人の尊厳を大切にし、権威主義に陥らないこと(倫理観、道徳観)
  (5)社会の秩序を維持し、社会や会社の諸規程・規律を率先して遵守すること(規律性)
  (6)言ったことや決めたことは、必ず実行に移すこと(誠実)

 3.問題発見能力と問題解決能力を高めること。そして、継続的業績向上に結びつけること。
   
  (1)仕事の進め方の基本であるPDCAサイクルをスパイラルアップすること
  (2)問題意識と感受性・好奇心を引き出すこと
     ・3W(なぜ・なぜ・なぜとWHYを3回繰り返す)思考の習慣化
     ・“何かおかしい、ちょっと変だ”と感じたら、立ち止まって視る/観る/診る
     ・ノーサイドミーティングを日々始終化、当たり前化
  (3)問題提起をする時は、必ず対案をセットにすること
  (4)試行錯誤を奨励すること、歓迎すること

      ※成果・成長=心構え(行動理論)×職務遂行能力×行動量
                      (自律要因)

  (5)失敗にこそ宝物が隠されていることを共有化して、勇気をもって問題解決の基本手順を稼働すること、させること

      ※成功確率が高い「問題解決の基本手順」
         【手順1】問題を把握する
         【手順2】原因を分析する
         【手順3】対案を列挙し整理する
         【手順4】比較選択して対案を選択する
         【手順5】選択案の実行計画を立て、全体をチェックする
         【手順6】計画に沿って、実行する
         【手順7】定期的に、進行状況を検証する


                                                                      (2016.10.28記)

就職活動のあり方、進め方の本質を考える会

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 岩手医科大学薬学部薬学研究会とのコラボレーション報告です。
 平成29年2月12日(日)9:00 ~ 12:30までの3時間半、矢巾キャンパスゼミナール室において、特別企画「就職活動のあり方、進め方の本質を考える会」が実施されました。会の企画・運営・コーディネートは、弊社の人材開発部長井上和裕(EDUCOいわて・学び塾・種蒔き塾主宰)が担当し、参加対象が5年生と4年生でした。
 この特別企画は五部構成で、①オリエンテーション、②薬学部卒者・薬剤師の職業いろいろ、③何故、就職活動のあり方・進め方について言及しようとしているのか。何故、20年近くも薬学生の就職活動の実態に異論を唱えて問題提起しているのか、④納得のいく就職活動のあり方、進め方の着眼点の例、⑤就職活動をどうするか、の流れで進められました。
 今回のコラボレーション実施の背景として、「非正規社員の働き方の意識と実態に関する調査」(日本経営者協会)から見えてくる薬学生の就活実態の共通点が非常に印象的でした。また、三つの狙い(以下参照)が明確でインパクトがありました。
 ・自分自身の将来の方向性を追究して、自主的・能動的で納得のいく就職活動の実現を目指す。
 ・将来悔いることのない職業選択のあり方や進め方を実践するためのヒントや着眼点を考える。
 ・就職活動における様々な情報源とその活用のあり方を学び、企業の真の姿の探索方法を見つける。

 日頃から井上が一先輩薬剤師として持ち続けている問題意識が、今回の特別企画の根底にありました。次の井上の問いかけに、現役薬学生が就職活動でどう反応するのか、それを見届けたいと思います。

“今の多くの薬学生にとって国家試験合格が最大の目標ではあると思いますが、6年制になったことの主旨や薬学部卒者に求められる任務・職能の方向性を鑑みれば、学生時代に将来像と向き合ってキャリアデザインを考えて明確にすることは、車の両輪であるべきではないでしょうか。これからも問いかけ続けたいと考えております”

エッセイ130:私の考える“企業内教育担当者の役割・機能”

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 今回から数回にわたりまして、私(井上和裕/EDUCOいわて・学び塾・種蒔き塾)の考える教育担当者の役割、求められる心構え、能力要件などを提案したいと思います。教育理念を実現するために、プロと称される教育担当者として、どうしても身に着けておきたい行動指針、具体的能力に関する内容でもです。
 このような本質的側面を、企業の垣根を越えて、同じ職務に携わる同志として、お互いの考えや思い、苦悩などを出し合いながら、前向きな議論が実現可能になることを切に願っております。胸襟を開いて切磋琢磨し合うべき時代なのです。

私の考える“企業内教育担当者の役割・機能”

●役 割 
 1.継続的教育テーマの策定                       
    ①顕在化している教育ニーズの把握                 
    ②潜在化している教育ウォンツの発掘                
 2.全社的教育風土作り
    ①教育理念の策定と浸透                       
    ②教育体系の策定とメンテナンス
 3.人材育成機会の企画・運営・フォロー                
    ①個別育成計画に対応した教育プログラム
    ②ニーズ・ウォンツにマッチした教育機会(職種別・階層別・ニーズ別)
    ③定型コース                                
    ④OJT(仕事・MT・会議など)
    ⑤目標によるマネジメント                        
    ⑥仕事研究的チーム活動
 4.研修インストラクター                           
 5.カウンセリングの実施
 6.ニーズに応じた支援、助言、指導の実践
 7.経営改善方法の提案と仕組み作り
 8.経営補佐(経営者の懐刀) 
 9.同業他社、異業種とのコラボレーション

●機 能
  ディレクター/インストラクター/ファシリテーター/メンター/カウンセラー/ガイド/コーチ/コーディネーター

  各組織が主人公となって、組織ぐるみで人材育成に取り組み、活き活きとした組織風土作りを企画・運営・推進する演出家(ディレクター)であり、
  社員一人ひとりが、自らを主人公と位置づけ、能動的に自問自答しながら潜在能力を引き出す促進役(ファシリテーター)であり、
  壁にぶつかった時の助言者(メンター)、聴き手(カウンセラー)、道案内人(ガイド)であり、
  『やって見せて、言ってきかせて、やらせてみて、ほめてやらねば人は動かじ』を、いつでもどこでも実践している指導者(インストラクター、コーチ)であり、
  人と人、人と情報、人とノウハウ、人と資源を結びつけて相互理解、相互啓発を推進する調整者(コーディネーター)である。

         *上記体系図:添付ファイル参照
                                                                     (2016.10.15記)

エッセイ129:教ウルハ、学ブノ半ナリ

 人口減少、超高齢化の時代になりました。総務省発表の2015年国勢調査(5年に1度実施)の速報値によれば、総人口は127百万人で前回と比べて減少に転じました。また65歳以上の高齢者率が26.7%(33,4百万人)で過去最高となりました。また、主要国で最も高い比率でした。この傾向は、ますます顕著になるといわれています。
 さて、これらの方向性から考えて頂きたいことがあります。それは、人材の奪い合いがより鮮明になってくるということではないでしょうか。容易に想像できることです。年令に関係なく、そう肚を括ることですね。学生の皆さんには、特に力を込めて申しあげておきましょう。それだけの危機感を持って今を生きて欲しいと感じているのです。
 現役のビジネスパーソンは、就業形態、雇用形態が何であれ、所属する会社や組織にもたれかかった働き方から脱却しましょう。正に従属的依存意識からの脱却であり、リスクテイクの心構えで対処することです。
 つまり、どのような会社や組織であろうとも通用する能力、認められる能力、貢献できる能力、重宝される能力を磨き上げることです。通用する能力を積み重ねて引き出しを増やすことです。そのためには、自分自身の生き方と心構えを明確にして、能力開発もキャリアアップもセルフマネジメントすることです。どのような状況にも媚びることなく、どのような事態にも想定外という思考停止に陥ることなく、状況に応じて賢明に革めていくことです。

 今回は、エッセイ127回(一人前の教育担当者への関門)の続編となります。

教ウルハ、学ブノ半ナリ

 「教えることは学ぶことである」
 このような表現は、世界の多くの国々に諺としてあるそうです。教育担当にとりましては、金言といえましょう。
 エッセイ127回目に掲載した『一千万円の買物』を寄稿してくれた友人は、“私のオリジナルではない”と断って、「教えることは二度学ぶことである」というフレーズを教えてくれました。“教えることで、自分の記憶の正確さを再確認し、忘れたことを思い出し、相手からの質問に啓発されます。正しく、二度学ぶことを実感しています。時々自分の中でその言葉を反芻しています…”と。

 中国の古典である『書経』には、このような一文があります。
 「教ウルハ、学ブノ半(なかば)ナリ」と。
 “教えることは難しいのです。先ず、教える側自らが十分に勉強しなくてはいけません。ですから、半分は自分自身の学問修業といえます”というような意味でしょうか。
『書経』につけられた先人の訓訳には、「人に物を教うるは学問の半分じゃ。物を読み、物を学びても、その事を人に教えねば、さほどに、飲み込めぬものなり」と書いてあるそうです。
 私が教育担当成り立ての頃、ある経営幹部からはこう言われました。「教えることが二だとしたら、八勉強しなさい。それだけの準備ができなければ辞めなさい」と。
 これらは、第一線を退くことが近づいてきたからこそ実感させられる金言となりました。

 教育担当として受講者の前に立ち続けて、つくづく思うことがあります。教えることは容易ではありません。潜在意識・潜在能力を引き出すことは、もっともっと容易ではありません。不確かな知識が露呈する、その場しのぎで終始する、思うように進行できない…、毎回反省点が浮き彫りになります。そんな辛酸を積み重ねたからこそ実感しているのです。教育担当者は、その任務の性質から考えて、他人の数倍は学ばなければいけません。数倍では済まないですね。十数倍、いや数十倍も…。それだけの覚悟が不可欠だということです。一方、反対方向から察すれば、教えることで二度学ぶことになります。深耕というおまけがつくのです。それをラッキーと考えられたなら、精神的余裕を持って楽しみ乗り越えることも可能ではないでしょうか。
 「教ウルハ、学ブノ半ナリ」を行動指針として10年間やり通したなら、どこの会社でも通用する能力は身につくと思います。私の経験則でしかありませんが、そう信じています。
                                                                  (2016.8.10記)

エッセイ128:心構えが変われば言動に表れる

 明けましておめでとうございます。
 年が改まりました。本年も宜しくお願い申しあげます。
 私にとりましては、71回目の年越しとなりました。ゆったりした気分で、平成29年の元旦を迎えております。「心構えが変われば言動に表れる。言葉と態度が変わる」を、今年の強調テーマに決めております。そのことを意識させてくれた先師の教えを、今年のトップバッターにしました。
 
心構えが変われば言動に表れる ~ 我以外皆我師也/歩歩是道場/書を捨てよ、町へ出よう

 最初は“我以外皆我師也”(われいがいみなわがしなり)。ご存知の方も多いと思います。作家吉川英治氏の造語で、人生哲学を反映した座右の銘として有名です。
 氏の著書では『新書太閤記』に出てくるそうです。「常に、接する全ての人から、必ず何か一事を学び取るということを忘れない」というような表現で出ているようです。
 一般的に言われているのが、同じ氏の作品『宮本武蔵』の、日観と武蔵の会話の場面での武蔵の言葉として引用されています。しかし、『宮本武蔵』の中では、“我以外皆我師也”という形では出ていないとのことです。
 
 二つ目の“歩歩是道場”(ほほこれどうじょう)は、趙州録に出てくる禅の教えとのことです。佐々木則夫氏(日本女子サッカーなでしこジャパン前監督)の座右銘であることを新聞報道で知りました。
 気になって調べてみますと、もともとの由来は“直心是道場”(じきしんこれどうじょう)という言葉で、“直心”とは、「素直な心、我執のない真っ直ぐで無雑な心」を指すようです。
歩歩是道場とは、「心構えいかんで、心の持ち方一つで、いつでも、どこでも、学びの場になる」という意味に解釈しております。 常に問題提起しております「頭の中に満たされた不要な水を捨てて、謙虚に学ぶことからスタートすること」が、大前提の心構えになりましょうか。

 三つ目は、詩人であり劇作家の寺山修司氏の評論集「書を捨てよ、町へ出よう」の一節です。
 それは、“教育は与えるものではない。受け取るものである。そのような視点に立てば、人生いたるところ学校であり、ゲームセンターにも、競馬場にも、映画の中にも、歌謡曲の一節にも、教育者はいるのである”という百文字未満の氏の見解です。
 私が教育担当の仕事を任されたのは30年前、昭和年代の後半でした。私の行く手に立ちはだかった命題に対する自答を模索していた時期でもありました。その命題は、“教育とは何か?”という、エッセイでも何度か取り上げたテーマです。当時の私にとっては避けては通れない、しかし何とも難解なテーマでした。そんな時に出会ったのが、“教育は与えるものではない。… ”という寺山修司氏の見解でした。目の前の雲間から明るい光が差し込んできた感があったことを、今でも鮮明に覚えております。何を介して出会ったか、その記憶は残っていませんが…。

 これらの先師の教えは、今でも、多くの場面で引用させて頂いております。

 「先ずは、頭を空っぽにして受け容れなさい」、「私たちの身の周りには、学ぶ人、学ぶ機会、学ぶ教材が限りないほど溢れています。あなたの心構え、考え方、見方、そして行動をちょっとだけ変えてみることで、見え方が違ってきませんか。あり方が変わってきませんか。そして、言い方が変わってきませんか」… 。
 私にとりましては、そのような大切なことを常に意識させてくる指針なのです。そして、信頼のコミュニケーションの土台であることを、何よりも忘れてはいけません。
                                                                        (2017.1.1記)

エッセイ127:一人前の教育担当者への関門は何か?

 採用担当者つぶやきエッセイをスタートさせたのは、11年半も前のことになります。当時お世話になったばかりの調剤薬局チェーンのホームページ(以下、HP)見直しがきっかけでした。
 オープンしてから一度も手つかずのままのHPを、抜本的にリニューアルすることになったのです。目指すビジョンや標榜する社会的責任を世に問うアンテナ的役割を強化することが主目的で、リニューアルの全権を委任されました。私が信頼する就職情報企業との協同作業で骨格を構築しながら、リニューアル後の更新情報のあり方に苦慮したことを忘れることはないでしょう。
 企業のHPの良し悪しの評価基準の一つに、“更新情報のアップ頻度”があります。中小企業の場合、何ヶ月も更新情報無しの企業を見かけます。そのような実態を鑑みて、更新情報を毎月アップすることを最大の目標に掲げたのです。それも、企業姿勢や考え方をメインに発信することにしました。そして、私がエッセイをつぶやいて毎月掲載することが、考えた末の結果となったのです。これがエッセイスタートの一番のきっかけでした。
 その裏で、つぶやく内容について四苦八苦する状態が始まったのです。立ち止まって悩んでいても、時は待ってくれません。数か月間は、その場その場で思いついたことを中心に、どうにかこうにか対処出来ました。半年が経過して、私が確信を持って問題提起できるテーマは、人事業務の一部である人材開発に関する内容でしかない、と結論づけるに至りました。具体的には、人材開発業務の内の採用と人材育成をメインテーマと定めて、“行けるところまで突っ走ろう”と腹を決めたのです。今振り返ってみれば、これもエッセイ執筆の潜在的きっかけだったと思います。
 1年ほど前になります。10年間の全エッセイを読み流し、あるものは何度も読み返しながら、改めてその傾向を確認することが出来ました。平成27年7月までにアップした全エッセイ(382回)の過半数が、人材育成や企業内教育に関するテーマであるということです。現状実態、現状実態への問題提起、将来の方向性と今後の課題に始まって、問題や課題解決の対案、教育とは何か、マネジメント、リーダーシップ、教育担当者のあり方・要件などの持論、更にはその都度湧き上がってきたテーマを羅列しながら、現在に至ったのです。余談になりますが、そのような認識から、人材育成に特化した“EDUCOの森”構想が浮かんできたのだと思います。
 さて今回のエッセイは、一人前と評価される企業内教育担当者の関所について考えてみたいと思います。

一人前の教育担当者への関門は何か?

 “勉強の目的は?”、“勉強とは、学ぶとは?”、“教育とは何か?”…、これらは常に意識させられる私自身への問いかけです。最近のエッセイでも、何度か登場した自問なのです。
 教育担当成り立ての頃は、「正答は一つ」に疑いの余地を挟むことはありませんでした。○か×という認識の世界で仕事をしておりました。しかし、人事教育の仕事経験を積み重ねていくうちに、問題解決のための議論を重ねていくうちに、或いは人事評価の在り方に悩み続けるたびに、○×の二者択一だけでは解決できない問題が多いことに気づき始めました。
 また、発する言葉が同じであっても、一人ひとりの言葉の理解度や解釈の違いから乖離が浮き彫りになることもありました。また、その逆もあるのです。発する言葉が違っても考えが同じであったり、その時々の問題認識の違いが明らかになることだってあります。
 “何故勉強するのか、学ぶのか?”の問いも、様々な見解があって、正解は10人10通りになり得ることが、年を重ねる毎に分かってきました。「楽しいから」、「友だちができるから」、「恋愛だって勉強。男女の内面の違いが分かった気がするから」、「興味本位で知りたいから」…

 薬剤師の友人が、10年近く前に寄稿してくれたエッセイをご紹介しましょう。“勉強の目的は何か?”の一見解例として、何度となく活用させて頂いております。

☆★☆一千万円の買物★☆★
 昭和45年に薬剤師になってから今日まで、約一千万円の書籍を購入しました。
 それは薬剤師として、不足の部分を埋めるための教材でした。
 薬のことだけではなく、生理、病態、解剖、診断、医学用語、検査、検査値、看護と系統も脈絡もなく、ほとんど手当たり次第だったと思います。
 約40年の月日が流れ、私の中で氷山がひとつ出来上がりました。
 日常は10%の海面上の力で処方せんに向い、患者様に接しております。
 海面下の90%は、私を支える自信です。
 学ぶこと、知ること、そして知っているという余裕が、私に仕事の楽しさをもたらしてくれました。
 結果だけではなく、そこに至るプロセスから得るものも大切です。
 ばらばらの知識が、あるとき突然にネットワークが出来上がり、生きた知識となるとき、水が氷に変わる瞬間を体感します。
 地球温暖化が危惧されるこの頃、私の氷山も溶けて小さくならないよう願っています。


 最近つくづく思います。
 「生きる」とは、「日々の生活から学び続けること」「日常の出来事から学び続けること」であり、「そうであることを知ること」、「そう覚悟をすること」が、私の残りの人生の指針となりました
 勉強の目的、学びの目的は、その人の生き方、人生観の産物なのだと感じております。
 そのように目の前の疑問に対して自答を繰り返しながら、後輩の若い青竹の教育担当者に対してアドバイスをしたあのひと言が蘇ってきたのです。もう20年以上になりましょうか。「一人前の教育担当者としての関門は何か?」という雑談的意見交換の中でのひと言です。
 
「自分自身の生き方や考えを、自分の言葉で語り、問題提起をして、その輪の中に目の前の受講対象者を引き込むことが出来る様になること」と。
 
 その後輩は、22歳で私の部下になり、関門を通過するまでに10年近い試行錯誤の時間を要しました。通過してからは、落ち着いた口調で語りかけ、粘り強く対話を繰り返しては、本質をはずさない進め方が出来る様になったのです。安心して任せることが可能になったのでした。30歳過ぎでしたが、難しい課題を乗り越えた努力に、今日は改めて敬意を表しております。

 年齢に関係なく、あなた自身の人生観を、染み透るようなあなた自身の言葉で投げかけられる教育担当者になって頂きたいのです。それが、最近の私の切実な思いなのです。
                                                                (2016.7.5記)

エッセイ126:日常の教育機会の指導ポイント

 6月5日(日)に、第18回学び塾がありました。開塾以来、福島市と郡山市で交互開催しておりましたが、今回初めて盛岡市で開催する運びとなりました。
 学び塾は20数名でスタートしました。7年前のことです。継続テーマを学びの基本としている関係で、途中入塾はお断りして進めて参りました。その間、人事異動による転勤、結婚退職、様々な理由による転職、その他私的な理由によって、塾生は年々減少しました。平成28年6月末現在、5名で続けております。
 塾生の多くは30歳になりました。社会に出て8年前後ですから、バリバリの中堅社員という位置づけでしょうか。今回の学び塾の冒頭で、期待を込めて「後輩の育成」を要請いたしました。

『今回皆さんに申しあげたい使命感は、「30才を過ぎたなら、人財育成(後輩育成)は責務である」ということです。これまでも何度となく問題提起してきました。
 強調したいことは、“謙虚に学び続けるとともに、それまで培って蓄えてきた能力を、(未熟な能力ではあるけれども)後輩育成のために積極的に使いなさい”、ということです。“自分:相手=49<51の行動理論で、影響力を行使しなさい”、“攻めの対人関係を築きなさい”ということを申しあげたいのです。年齢的に は、もうそんな時期に差し掛かっています。
 今の年齢で変わることができなかったら、一生受身の姿勢から脱皮できないと断言します。 ………… 』

 “後輩育成は皆さんの任務である”ということ、“人財育成という志事(敢えて、仕事を志事と言い換えました)は、それまでの何倍もの勉強が必要となることから、自分自身の大きな成長機会でもある”ということも、声を大にして伝えました。
 また、私たちが属する業界の企業内教育に対して感じている私の危機感についても、率直に伝えました。

『厳しい評価と思われるかもしれませんが、薬剤師有資格者の教育担当で、私がプロと諸手を挙げて評価できる方に出会ったことは、残念ながら無いのです。“人財育成推進の鍵を握る企業内教育担当の育成こそが喫緊の大きな課題”と、ハッキリと申しあげたいのです。 ………… 』

 今後のエッセイでは、様々な角度から人財育成の着眼点を取りあげる予定でおります。今回がその第一弾です。日頃感じている、日常の教育活動におけるマネジャーの着眼点を考えてみました。

日常の教育機会の指導ポイント

 企業内教育において、教わる側は当然として、教える立場の人は、教わる人以上の覚悟と姿勢が求められます。その覚悟や姿勢は、人財育成の成否を左右する重要な着眼点なのです。
 教えるという行為は、「教える内容を、納得し理解しながら誠実に学んでもらうことであり、最終的には“知って出来る”レベルに導くこと」です。限られた時間・場所・機会の中で、効果的効率的に目的達成するためには、かなりの工夫と粘り強い努力が必要となります。その場合明らかにしておきたいのが、効果第一主義ということです。その上で効率的な進め方を工夫することになります。それらのことを再認識して、“日常の教育機会における指導ポイント”を再編してみました。
 もう一つ重要な着眼点があります。それは、“日常の教育機会は研修(OffJT)だけではない”ということです。OJTや自己啓発はもちろん、会議やミーティング、日常の対話、プロジェクト活動、顧客とのやり取りを含めて、毎日の細かな一挙手一投足全てが教育機会なのです。就業時間内での出来事全てが育成機会と位置づけることが肝要なのです。教育=研修という先入観・固定観念に縛られている方は、この機会に改めて頂くことを切に望みます。
 以下、私が意識しております日常の教育機会の指導ポイントをご紹介したいと思います。それらは、教える側の自己啓発ポイントでもあります。

1.学ぶことに対する基本スタンスを矯正する~学ぶ機会への感謝の心

 学ぶ機会があることに対して感謝すること!
 先ず、教わる方々に、当たり前の心構えとして、感謝する心を意識づけすることです。教育環境を会社が作ることは当然の責務ではありますが、教育機会が少ないことを理由として自己啓発を疎かにするような、いわゆる従属的依存意識を改めることからスタートしなければいけません。
 もう一つ、自分自身の成長願望を公言できるように動機づけすることです。具体的には「とにかく学びたいのです。だから、教えてください」と真剣に言える人の育成こそを強く申しあげておきます。

2.部下や受講者のやる気・好奇心・感受性を高めて、想像力を養い発揮させる

 やる気を高める要因の一つは、徹底して知識を増やし、スキルアップすることです。そうすることで、今まで解決できなかった問題や課題が、それまでよりは高い確率でクリアできるようになります。また、仕事を遂行する上で役に立つことが徐々に増えていきます。新たな能力が身について明らかに増えてきたことが実感できれば、自ずと主体的に学ぶようになります。解決の着眼点が増えて、学ぶことが楽しくなっていくのです。
 学ぶことがもっと楽しくなる秘訣は、小さな自分運動を継続して、スモールサクセスストーリーを積み上げさせることです。日々の失敗から学ばせることはさらに重要です。そして、毎日の小さなコツコツ努力を、何年も何十年も積み重ねるしか道はないと覚悟させることです。経験の浅い段階では何も見えてきませんが、根気よく行動し続ければ、的を得た問題意識が拡がる感覚が芽生えてきます。やる気はもとより、好奇心も感受性も、そして想像力も高まっていくのです。そう言い続けながら、より積極的な行動姿勢を引き出し、継続行動を促して粘り強く育んでいくのです。
 具体的手法としては、目標と自己統制によるマネジメント(目標によるマネジメント、目標管理)が最適です。

3.自力で解決できるようにする

 私の考える教育の目的の一つは、“自力で解決できる人財”の育成です。自助力(自分一人で問題や課題を解決できる能力)のブラッシュアップです。そのためのポイントとして、二つのテーマが考えられます。

(1)「問題(課題)解決の基本ステップ・対処方法」と「知識の在処(ありか)」を明示する

 困難な問題が発生した時、今までのやり方では解決できそうもない課題に出会った時、次のような事態が考えられませんか。
 “何をどうすればいいのだろうか?”、“どうしたら解決に導くことができるのだろうか?”、“どこから手をつけたらいいのだろうか?”等々、スタートから大きな壁にぶつかると思います。研修などのOffJTでは、時間的な制約のもとでの進行になりますから、用意周到な準備が成果に影響してきます。
 そんな時は、学び方や考え方の基本ステップ、問題解決の基本的な対処方法、知識の在処がしっかりとインプットされていることで、スタートダッシュに弾みがつく度合いが高まります。
 具体的には、「達成確率が高い問題解決の基本手順(プロセス、流れ)が身についていること」、「目的、目標、課題の主旨・理由(何故)が理解されていること」、「解決に必要な知識・情報が何であるのかを知っていること」、そして「健全な心構え(行動理論)を貫いていること」などが挙げられます。知識の在処とは、その時々に必要な知識が何に(専門書・テキスト・手引・書籍・教材など)掲載されているのか、どこに行けば(例:○○図書館など)入手可能なのか、あるいは誰に訊けば分かるのか、など知識の入手先や入手経路のことです。その引き出しが多ければ多いほど、様々な角度からのプランニングが可能となるでしょう。

(2)重要な事柄(根幹)と重要でない事柄(枝葉)を明示する
 人間の吸収力には限度があります。絶対に身につけておきたい事柄(根幹の部分)とそうではない事柄(枝葉の部分)を明らかにして、メリハリをつけて教えることで教育効果が格段に高まります。あれもこれもでは、消化不良に陥ってしまいます。
 そのためには、教える側がどれだけ学んだのか、事前にどれほどの準備をしたのか、にかかってきます。正に、“教うるは学びの半ばなり”なのです。その上で、一人ひとりの修得度合いに応じて対処することです。

4.徹底して基本を修得させる

 「教育の基本理念」(エッセイ123参照)の“理念8:育成の原則は修・破・離である”を思い出してください。業績や成果を左右する要素の一つは、どれだけ職務遂行能力を身につけたかです。対人関係能力も含めた職務遂行能力のプラットホームは基本です。若いうちに、基本を徹底的に身につけたかどうか、基本が身についたかどうか、それで“勝負あり”なのです。

                                          (2016.6.25記)

エッセイ125:私の提唱する「教育活動の基本原則」5~10

 前回の続きです。私が提唱しております「教育活動の基本原則」の原則5から原則10の紹介になります。

私の提唱する「教育活動の基本原則」5~10

●原則1『会社・各組織の教育方針・教育計画と社員一人ひとりの個別育成計画を、できる限り合致させること』:目標による管理
  
●原則2『現場に適合した教育を、自力で実施すること』:現場密着型教育、研修企画検討表
  
●原則3『いま必要な教育を優先的に行なうこと。やる必要のない形式的教育を、わざわざ行なってはいけない』:教育ニーズを明確に(研修企画検討表)
  
●原則4『教育は人事機能の一部である。だから、人事制度全般と連動させて企画運営すること』:人事と教育の一元化、キャリアプラン・キャリアパス
  
●原則5『仕事そのものが育成の教材である。だから、人財育成の推進テーマ・内容は、各職場の各仕事を中心に企画すること、そして実施することが基本』:OJT・OJLを日々始終
  
 企業内教育の推進テーマは、“日々の仕事そのもの”、“日々の出来事そのもの”になります。それが基本であり大前提なのです。そのことが、“目標による管理(マネジメント)”推進の核心なのです。
 人財育成は、部下を持つ管理者(マネジャー)の主要任務ですから、育成責任者は管理者一人ひとりとなります。人財育成の重要性を鑑みれば、使命感を持って対処するしかありません。部下(メンバー)の不具合に気づいたら、即、その場で矯正(OJT、OJL)する姿勢が習慣化されていなければなりません。後でまとめて注意するやり方は、ご法度ということです。
 最悪なのは、人財育成に関心がなく、その不具合に気づかないことです。気づこうとしないことです。そんな管理者は、自分からその職を降りて頂きたい。財産である部下が迷惑をします。部下は、上司を選べないのですから。

●原則6『受講者には、学んだことを活用する機会を作ること、作らせること』(活用のない教育は、無意味・無価値・無駄になってしまう):教育と仕事の連動
  
 初任者に、知識教育は不可欠です。しかし、学んだことも、使わなければ錆びついてしまいます。そこで、研修受講後に学んだことを活用する機会を、必ず作ることが重要です。
 その機会をどうやって作るのか?キーパーソンは、直属の上長です。原則5で申しあげた通り、育成責任者である上長が活用機会を考えるのです。フォローツールとして、「6ヵ月間実行計画書」などを用意すると、活用実態や成長実態などの進捗状況把握が容易になります。

●原則7『教育は、体系的な仕組みの中で、計画的・継続的に実施して、大輪の花開く土壌(風土)が醸成されていく』:教育は風土作り・風土改革
  
 “人財育成は当たり前”、“教育は自主的に取り組むことが大前提”という職場環境が、どんな逆風に襲われてもグラつかない理想の職場の一つではないでしょうか。そのような職場風土を実現するためには、人財育成の総責任者でありコントロールタワーの教育担当が、人事制度と連動した教育体系を策定し、粘り強く継続して運営することが求められます。
 “農作物の生命は土壌にある”ともいわれます。企業の土壌は、風土であり文化です。企業内教育の行き着く先は、企業風土(文化)作りであり企業風土(文化)改革なのだと思います。

●原則8『実施後の成果評価と今後の方向づけを、各々の立場(受講者、上長、専任スタッフ、会社)で、自主的に行うこと』:PDCAサイクル、研修派遣事前・事後フォロー手順
  
企業内教育の中でも、研修などのOffJTは、成果評価が難しいのが 実状です。しかし、評価・検証をキチンとやらなければ、マンネリ病に罹って企業の存在価値失墜への道を歩むことになります。
 私は、どのような教育機会においても、最低半日の時間を費やして成果評価を行い、次回の改善項目を具体化しております。教育機会一つひとつのスパイラルアップを意識して、自主的にPDCAサイクルを回しているのです。因みに、費やす時間が2時間で済む場合もありますし、延べ1週間以上を要する時もあります。それぞれの経緯・目的、位置づけ、今後の関わり方の比重、そして、その時々の状況と睨めっこしながら対処することになります。
 その行為は、教育担当の顧客である受講者への誠意の表現でもあります。顧客満足(Customer Satisfaction)は、全ての仕事に共通した着眼点でなければいけません。担当する仕事内容や職種によって異なってくるのは、対象となる顧客の違いだけです。

●原則9『教育理念と実施内容の整合性を図ること』:コストパフォーマンスの意識
  
 教育投資にも、コストパフォーマンス意識が強く求められます。経営環境悪化を想定したリスクマネジメントの訓練にもなります。
 コストパフォーマンスを高めるためには、基本理念と基本原則を意識して具現化していくことにつきます。要約すれば、実施内容と基本理念&基本原則との整合性を図って企画し実施することです。特に理念は、企業姿勢の対外的な公式宣言なのですから。
 もう一つ、実質費用についても意識して考えたいものです。かかる費用が少なくても、パフォーマンスがゼロとか不満足では、時間と費用の浪費といえましょう。原則3と同じように、ここでも“時は金なり”はという着眼点を忘れないようにしたいものです。
 改めて強く申しあげます。経費の無駄遣いが明らかな“実施する必要度が低い教育機会”の開催には、誰よりも毅然とした態度で排除しなければいけません。そのような行動こそが教育担当の矜持である、と公言できるようになりたいものです。

●原則10『企業全体に、「教育は永続的繁栄の基盤であり、教育機会への参画は当たり前」という考え方を浸透させること』:理念の共有・共鳴

 “お題目”という表現を使う時は、誉められるケースではありません。
 企業理念が、“お題目”として揶揄されることがあります。理念の具現化を本気で目指しているのかどうか、非常に疑わしい場合がその類いに当たりましょう。朝礼で唱和する企業もありますが、実現を念頭に心を込めて唱和したいものです。
 共有そして共鳴という空気は、一朝一夕に作り出すことは不可能です。役員・上位管理者が、意識してそのための機会を作り、繰り返して説いていくしかありません。また、言行一致も絶対条件です。些細なことでも、一回の言行不一致が不信感となって伝染します。
 永続的に繁栄している企業は、理念や方針が風土として、文化として根づいています。社員の中に浸透しています。経営者が率先して、理念・方針の共有を主目的としたコミュニケーションの種を小まめに蒔いているからです。粘り強く話しかけているからです。
 その企業特有の風土や文化のことを「○○WAY」と表現しているケースに出会います。世間様から、○○WAYと認知される企業を目指したいものです。そのような企業は、間違いなく強い。強い企業は、上に立つ者ほど、自主的に教育機会に参加しています。積極的に自己啓発に励んでいます。謙虚に学んでいます。その結果として、永続的に顧客から支持されるのです。
 教育担当は、誰よりも誠実で賢明な旗振り役でなければいけません。言行一致を貫く覚悟が求められる志事なのです。
                                                                      (2016.7.20記)

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